第24話 進む理由


 草をかき分け師匠はどんどん進んで行く



 恐怖が微塵も感じ取れない



 自分の身を守る『魔法』に余程自身があるのだろう。



 当たり前だが師匠もここがどんな場所か知っているはずだ。



 なのに何故この人は恐れず前に進めるのだろうか。         

 どうしてそんなにも覚悟が決まっているのだろうか。


 俺には分からない。





▼△▼





 10分ほど経った頃だろうか




「ここで休もうか」

 



 日光が遮れる丁度いい草がある



 師匠の息が荒い。

 どうやら歩き疲れたようだった。 



 俺は日々魔法の訓練と併用して、筋トレもしているのでそれ程疲れてはいなかったのだが




「そうしましょう」  




 ここは師匠を無理させてはいけないと思い言った。




「はぁ〜疲れたぁ〜」




 師匠はそう言い地面に寝ころんだ。

 髪や服が土で汚れてしまう




「汚れますよ」




 キョトンとした顔でこちらを見てきた

 どうやらもう遅かったようだ。


 

 俺は聞きたかったことがある

 恐らく聞くならこのタイミングだ。



 なぜここに来たのか

 俺のトラウマかもしれない場所へどうして足を踏み入れたのか



 それが知りたい




「師匠…ここに来た理由ってなんですか?」




 少し間が空き




「ん〜ちょっと気になる事があって」




 気になる事?



 ポンコツ師匠はいつも脳天気に生きているのだと思っていたのだが…




「何です?気になる事って?」




 なのでとても気になる




「…アオイに言っても分からないから言わなーい」




 顔をそっぽに向けそう言ってきた。




 ……




 むかつくが、俺にわからないことだと言うと魔法関連の事なのだろうか。



 気になるが師匠が言わないと言っているのだ。

 無駄な詮索はよそう。




「ふぅ〜」




 喉乾いたな



 ここは日差しが厳しく先程から汗が止まらない。



 それもこれも師匠が作ったこの服のせいなのだ。



 脱ぎたいのだが、もし脱いだら師匠が泣いて駄々をこねる光景が目に浮かぶ。


 それもいいのだがもしそうなったら面倒くさい。



 そうなったら恐らく師匠は一人で帰り、1ヶ月間サバイバルをする事になる。



 それだけは避けようと心に誓った。


 

 だが、流石にのどが渇いてきた

 なにか飲み物を飲みたい。

 


 そうこんな暑い日にはキンキンに冷えたコーラに限る。



 その時ふと思い出した。



 そう言えばあの時のコーラはどこに行ったのだろうと。



 今更見つけ出しても腐っていて飲めるはずが無い。

 だが、俺が元の世界から唯一持ってこれたものだ。

 ペットボトルだけでも見つけ出ししたい

 そんなふうに思っていたら




「行くよ!」




 どうやら考え込んでいたらしく師匠はもう背中を向け、先に進んでいた。




「今行きます」




 急いで師匠のおおきい背中のあとを目指し、歩き始めた。




 こうして


 師匠は何か気になる事を確認するために


 俺はこの世界に一つしかないペットボトルを求め


 この森を再出発したのだった


 

 


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