第22話 惨めな対抗
師匠の師匠ことシャイナさんの城から帰り1ヶ月。
俺がこの世界に来てから8ヶ月が経過した。
ふと思ったのだが、何故正確に経った月が分かるのだろうか。
前まで気にもしなかったのだが、あぁ○ヶ月経ったかと頭の中で当たり前かのようにわかる。
俺は完全記憶能力など無い筈なのだが…。
答えがわからないことを考えていても仕方無い。
と考えを打ち切った。
さて、話に戻ろう。
俺達はシャイナさんの城から帰り1ヶ月が経過した。
俺は相変わらず家の家事をしながら魔法の練習をしている。
師匠はというと、家に帰るやいなや部屋に引き籠もり何かしている。
食事の時は呼んだら来るのだが、「何してるんです?」と問いかけても「ひ、み、つ♡」と言われてしまったので仕方なく諦めた。
ある日、部屋から「ドカッ!」となにか爆発した音が聞こえ駆けつけたのだが、「開けないで!」と言われた。
まさか、鶴の恩返しのようにドアを開けたらいけない理由でもあるのだろうか。
▼△▼
そして現在、師匠はドヤ顔をしながら俺の前に立っている。
口角を上げ子供のような顔がかわいい
「あの…どうしたんですか?」
ふんーと鼻息を勢いよく出し
「見せたいものあるから待ってて!」
と自分の部屋に走っていった。
………段取り悪いな。
などと思ったのだがまぁ可愛い顔が久しぶりに見れたので許す。
しばらくしたら服のような物を持ってきた。
「えっと……これが?」
師匠の意図がよく分からない。
「これ、私が作ったんだ!」
ふふん。
とドヤりながら言ってきた。
作った?
これを?
この人が?
正直信じられないのだが、1ヶ月間部屋に閉じ籠もっていた理由がこの服を作っていたのなら合点がいく。
「凄いです」
「でしょ!」
全くちょろい女だ。
まぁ今回は素直に凄いのだが、
「えっと…それで?」
疑問に思った。
これがとうしたのだろうかと。
「アオイにあげる」
一瞬言っている意味がわからなかったが、すぐさま理解した。
あげる。
師匠はそういった。
何故くれるのか不思議に思ったのだがその視線がものがたっていた。
師匠の目線は俺の左手人差し指にいっており、どうやらシャイナさんに貰った指輪に対抗したのだろうか。
「いや、かわ…」
「ん?」
……
ついつい「いや、かわいいかよ」と言いそうになった。
師匠は俺が言いかけたことが感想だと勘違いしているのか、目をキラキラさせながら見てきている。
「いや、革っぽいですけどこれなんの素材ですか?」
我ながらいい誤魔化しができた。
俺が冷や汗をかいていることに気づく筈もなく師匠は鼻をたかくし
「これは師匠の城から盗んできたのだよ!」
などとのたまったのだ。
…なぜそんなにも自慢げに言えるのだろうか。
だが俺が城から帰るときに考えていた事が当たったことに少し嬉しかった。
どう答えるのが正解なのだろうか。
ここで「え…それはやばいですよ…」と言った時には、おそらく師匠はとてつもなく凹むだろう。
おそらくではなく確実に。
なので答えは
「さすが師匠です!」
褒める。
これをすると大抵師匠は勝手に自分のいいように解釈してくれる。
「でしょ〜でしょ〜」
やはりちょろい。
だがこの服の素材を盗んできたのだとしても、これを作ったというのはすごい。
俺はまだ少ししか分からないが、
「これ魔力入ってますか?」
そう、感じたのだ。
服に魔力を込めるなどできるはずが無いのだが、魔法に敏感になったからなのかこの服から魔力的なものを感じ取った。
「んふふ〜気付いちゃったかぁ〜。実はこれ私の魔力を込めながら作ったの。だからこれを私だと思って着、て、ね♡」
なんてメンヘラ発言なんだ。
この服を師匠だと思ってきたときには俺がポンコツになっしまいそうだ。
そう思い怪訝な表情をしていたら
「ほら!早く!」
無理矢理袖を通してきた。
抵抗するのだが、師匠の腕力に組み伏せられた。
あぁ俺は今日からポンコツになるのかと、全く身動きが取れない中絶望した。
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