第20話 あるはずが無いもの
あの後師匠は何処かへ行き、取り残された俺はすることも無いので城を周ることにした。
来たときは気づかなかったが、この城の廊下には今にも動きそうな鎧が多く並べられていた。
その鎧は統一感がなく、天井にまで届きそうな程の大きい鎧や、小人サイズの鎧など大きさはバラバラだった。
シャイナさんって実は面倒臭がりなのではないだろうか。
いや、この鎧は意味があって統一感がないのだろうか…。
………
分からない。
階段の壁には絵画が飾られていた。
それはどこかの湖だったり、自画像だったり様々だ。
足を止めず、横目でそれらを見ていたのだがある絵を見た瞬間、目を見開き唖然としてしまった。
それは独特な絵だった
それは見たことのある絵だった
それはこの世界にあるはずが無いものだった
それは…
「私の思い」
という名前の有名な絵画だった。
何故ここにあるのだ。
この絵と全く同じものをこの世界の人が描いたというのか?
いや、そんな事ありえない。
これは作者が50年かけて描いたと言われているものだ。
俺が考え込んで絵をまじまじと見ていた時にこれがこの世界のものでは無いという決定的な所を見つけた。
『ポーンズ・ラ・サーベント』と達筆で見ずらいが確かに見たことのあるサインが絵の左端に申し訳無さそうに書かれていた。
俺の記憶が正しければこれは【別の世界】の絵のはず。
なぜここにあるのだろうか。
この絵画も俺と同じように【転移】して、この世界にやって来たのだろうか。
とそこまで考えたのだが、思考がループし始めたので考えを打ち切り足を動かし始めた。
▼△▼
この城には鎧や絵画以外に目立っていたものといえば、この城のデザインだろう。
俺にはなにがいいのかよく分からないが、至るところの壁に穴?のようなものが空いていた。
部屋にまで貫通しないものの、かなりの深さに2度見してしまった。
▼△▼
城を周り終わり自分の部屋に戻ってきた。
師匠の部屋に行ってだる絡みしようかと考えたのだが、やめておいた。
俺は良い弟子だからな(•̀.̫•́✧
「コンコン」
などと考えていた時ドアがノックされた。
このノックの感じ…
「どうぞ〜」
『失礼します』
どうやらシャイナさんだったようだ。
どうしたのだろうと思っていたが、昨晩のように
「どうぞ」
椅子をひいた。
俺ってなんて紳士的なのだろうと思っていたとき気づいた。
何やら右手になにか持っている。
箱だ
小さい箱。
『ありがとう』
気になるが今はシャイナさんの方が優先的だ。
『これ……受け取ってくれる?』
シャイナさんは俺が座るやいなやそんなことを言い、パカッとまるで婚約指輪を開けるかのように箱を開け、こちらに渡してきた。
「は、はぁ」
頭が追いつかず気のない返事をしながら受け取り、中に入っているものを確認した。
………
こ、これって……
「指輪?ですか?」
……
『う、うん…』
夕焼けのせいなのかもしれないが、シャイナさんの顔が少し赤く染まっていた様なそんな気がした。
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