第12話 うざい
あの無茶振りから一ヶ月が経った。
魔力が体にあるという感覚は掴めたのだが魔法はてんで駄目だった。
まず、魔力の使い方が分からない。
テルナが教えてくるのは感覚的なもので、
『ぐるぐるってやってしゅわ〜ってやる!』
と言う意味不明な事だけだ。
この人師匠らしい事したか?
今日も今日とて魔法の練習のため瞑想を始めた。
目を瞑り息を整え心を落ち着かせるのに一番効率がいいのだ。
こうする事により魔力が体を巡っていることが感じ取りやすくなる。
少ししたら魔力が体中を巡っているのを感じ取れた。
だが、これをどうしろというのだろうか
『ぐるぐるってやってしゅわ〜』とは一体……。
分からない。
流石にどうしょうもないので師匠のいるソファに向かう。
「あの…もっと感覚的なこと以外で教えてくれませんか?」
だらけきっているやつにそう問いかけたのだが
「んぁ〜……」
寝ぼけたような返事を返された。
仕方なく肩を揺すり起こす。
「師匠〜」
何なんだこの女は…
少しイライラしてしてきた。
「んっ〜何よもお〜ね…て…る………のに」
嫌そうに目を擦りながら体を起こしたのだが、服がはだけている。
服のサイズがあってあないのか、右肩がでており横乳がもろに見えている。
なんでこの人はこんな服を着ているのだろうか。
「服、ちゃんとしたの着てくださいよ」
「んぁ〜」
そう言いやっと自分の服装を確認してはだけた服を着した。
だが、そもそも服のサイズがあっていないせいか、少しづつ服がずれていってる……
「まったくアオイは変わったなぁー」
いや
「誰のせいだよ」
我ながら良いツッコミができた。
まぁ事実なのだが…。
寝ぼけているのか間が空き
「え?私!?」
声を大きくして反応した。
こいつ……
「師匠以外にここ、人います?」
先程より長い間が空き………
「まぁ……そんな事は一旦おいといて、何で私を起こしたの?気持ちよく寝てたのに………」
はぁ…
なんて自分勝手な人なのだろう。
「魔法全然出来ないんで何かもっと教えて下さい」
やっと言いたいことが言えた。
と嬉しくなりそうだったが
師匠はキョトンとした顔で
「え?教えたじゃん。ぐるぐるってやってしゅわ〜だって」
などとのたまったのだ。
そんなんじゃ分からんわ
そうツッコミそうになった。だがもしツッコんだら、「今日はキレキレだね〜」と煽られる未来が見えるのでぐっと抑える。
この人はこんなのでも俺の師匠であり、この世界で唯一頼れる存在なのだ。
「それが分からないから困ってるんです」
怒りを押し殺し、丁寧に聞き直した。
すると師匠は
「はぁ〜〜」
面倒くさそうにため息をつき言ってきた。
「あのね〜魔法を使える人ってこの世に私を入れて5人しかいないんだよ?簡単にできるわけ無いじゃない」
「はいはい」
これで何度目だそれを聞いたのは…
この世界の大抵の人は魔力は使えるが魔法は使えないのだ。
なので魔法使いはこの世界でものすごく重宝されていると言う。
「Zzz……」
寝やがった
「まだ話してる途中ですよ!」
いつも聞く耳を持ってくれない
だが今日はとっておきがある。
「あの〜師匠?俺ずっと気になってた事があってその……師匠の英雄譚ってないんですか?」
ビクッ
師匠の背中が僅かにはねた気がした。
この前と同じような反応……
これか。
「他の魔法使いの方の英雄譚はたくさんあるのに何で師匠のだけ無いんですか?」
オレがそう問いかけると
慌てて起き上がった
「た、たまたまなかったんだよ。こ、この前燃やしちゃって…」
と、目を泳がせながら言ってきた
嘘っぽい
ものすごく嘘っぽい。
少し揺さぶりをかけてみる。
「この前っていつですか?俺が来る前ですか?そもそも燃やしたってどしたらそうなるんですか?」
質問攻めをした
顔を伏せブルブルと肩が震わせている。
流石に言い過ぎてしまったか。
人には聞かれたくない1つや2つはあるものだ。
俺が謝ろうと思ったら
師匠が突然立ち上がり赤くなった目をこちらに向けて
「私がどれだけすごいか分からせてやる!」
大声でそう言い左手首を掴んできた。
瞬間
場所が変わった
意味がわからなく顔を上げたら
大きな城が目の前にあった。
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