第8話 ちょろい女
「あ!そうだちょっとまってて!」
そう言い部屋から出ていく。まったく慌ただしい人だ。
さっきの会話の中で分かったのだが、俺が【ゴブリン】だと思っていたのが【ゴブリナ】だということが分かった。
気おつけようとしていた時に
「どう?具合の方は?」
と言いながら帰ってきた。
左手に何か持っていた。
「まぁまぁです」
と 曖昧な返しをしてしまったが、さっき目が覚めたばかりなのでよく分からないと言うのが現状だ。
ふと、彼女が持ってきた物に目を向けるとそれは見覚えのある木箱だった。
「これあなたのでしょう?」
と言いこちらに渡してきた。
「あっ…はい」
そう言い受け取る。
中を開けてみると思っていた、刃がむき出しの少し曲線を描いた短刀があった。
何故かテスラは
「君の大切な物なんだね」
と言いながら鼻をすすっている。
情緒不安定な女だと少し引いてしまった。
涙目になっているので、「あぁこれは、かっこいいよかったから盗んだやつです」などと、とても言えない雰囲気になってしまった。
取り敢えず
「ありがとうございます」
感謝をしておく
気持ちが落ち着いたのか、テスラは近くにあったイスに腰を掛けた。
すると
「ところで君は何であそこにいたの?」
と、突然真顔になり質問してきた。
どう答えるのが正解なのだろう。
「いやー気づいたらあそこに居たんですよ」などと答えたら変人でしかない。
あそこがどこかも分からない。
それにこの人はまだ信用できないと思い少し考え
「迷子になって気付いたらあそこに居ました。」
と嘘がバレにくいと言われている【半分本当の事ですよ作戦】を実行したのだが、俺の思っていた反応とは逆の反応が返ってきた。
「え、迷子?」
「はい」
こうゆう時は堂々としていればなんとかなるというものだ。
「あそこで?」
「はい」
「そ、そう」
黙ってしてしまった。
何かを考え込むようにしている。
「君、名前は?」
そうだまだ俺の名前を言ってなかった。
「坂谷蒼です」
「サカタニ•アオイか…じゃあアオイはどこから来たの?」
やばいどうしよう。
異世界から来ましたとは言えない。
なので
「遠い…遠い島国から…」
と言いながら、意味深になにもない壁を見つめる。そうする事によって何か過去にあったのだと思わせ、
「そっか…」
よし
俺の勝ち。
またもや沈黙が続いた。
取り敢えず空気を変えるために
「そのマントかっこいいですね」
ピクッと体が反応したように見えた。
これだなと思い間を空けずに攻める。
「服装が紫色で統一されていて、良く似合ってます。」
顔を上げこちらを見てきた。
何かうずうずしている様に見える。
言ってほしいことがあるのだろうか。
本人の心に刺さるものを探し
「声が透き通っていておちつきます。」
目力が強くなり気迫が伝わってくるった。
どうやら言ってほしいこととは違ったようだ。
頑張って絞り出す。
「えっと…その…あの……お、大人の色気を感じます。」
「にへへ〜」
満面の笑みだった。
どうやらこれのようだ。
すると気が良くなったのか、突然椅子から立ち上がりこちらに指を指したと思ったら
「気に入った!これからお前は私の弟子だー!」
などと意味の分からないことを言い出した。
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