第9話 勇者再び

「…ん?」

「どうかしました?スズランさん」

「いや、ちょっと違和感を感じただけや」

「違和感ですか?全然感じませんよ?」

「ん〜?なんや?何か懐かしい感じがする…」

「何でしょうね?」

「…わからん」

「姐さ〜ん手が止まってますよ〜」

「ガレート達しかおらんねんからええやろ別に」

「そうでした」


「あの〜ランさん?」

「……( ゚д゚)ハッ!」

「お、目が覚めたか」

「アリューン様が…バニーに…」

「もう着替えました」

「あ、そう」

「さて、ラン」

「何?ガレート」

「お前も酒を嗜んだらどうだ?」

「そうね、久しぶりに結構強いお酒が飲みたい気分だわ」

「ほどほどにな」

「ねぇ、このお店で一番強いお酒は?」

「そうですね〜」

サザンカはゴソゴソと酒棚を漁ってみると。

「あ、これなんてどうです?」

その酒瓶には『魔皇殺し』となんとも物騒な銘柄の酒であった。

「へぇ、『魔皇殺し』…」

「おいサザンカ、それ魔物を殺せるほどの酒やないか」

「まぁ、底辺レベルの魔物であれば即死でしょうね」

「いや、そんなもの人間に飲ませんなや」

「あら、私は人間だけど結構耐性はあるわよ」

「舐めちゃだめですよスズランさん、こいつ『オーガ』と飲み比べして勝ってるんですから」

「お前ほんとに人間か?」

「人間よ人間、I am a Human」

そう言いつつサザンカは『魔皇殺し』を開けてグラスに注いだ。

「すごいわね、透明なのにアルコールの臭がプンプンするわ」

「おいおいサザンカこれアルコール度数どれ位や?」

「え〜っと…たしか99%?」

「ほぼエタノールやないか!」

「それじゃあグイッとな」

「「あ」」

ランは飲むどころかやってしまったのである、酒を飲む際にやってはいけないこと1位の『一気飲み』を。

「う〜ん、美味し〜」

「…」

「わ〜お」

「準備出来たよ〜って酒臭!?」

「なんですかこの酒臭さ!?」

準備を整えたアリューンとカスミはスズランたちの元へやってきた。

「今丁度ランさんが『魔皇殺し』をイッキしたとこよ」

「え、大丈夫なんてすか?」

「ほら、ピンピンしてる」

「う〜ん、流石に強すぎて少し酔ったわ」

(少しなんか…)(少しって…)

「それはそうと演奏して良い?」

「あ、うんええで」

「は〜い」

ルンルンで演奏しに台へ登った。



演奏中

「いや〜噂通りすごいわ〜」

「そうだな、投げ銭入れたいくらいだ」

2人はご満悦のようだ。(1名『魔皇殺し』の酒瓶を抱えている)

「…」

(なんや?こちらに近づいてくる気配が?)

「ここから魔物の臭がするな」

(…出たぁ!!勇者や!)

「む!そこの歌人とバーテンダーの2人!」

「何か?」

「今日は定休日ですよ?」

「…」

(まずい、私は大丈夫やけど2人は…)

「貴女たち…魔物だな?」

「「…」」

「勇者く〜ん」

「な、なぜ騎士団長がここに!?」

「勇者よ教えたはずだ、魔物の全ては悪ではないと」

「ギルドマスターまで…」

「それに君はここで戦えばまず負ける」

「何?」

「そこの女性…スズランさんは君より強い」

(なんで私に矛先向けんねん!?)

「なんだと?」

「だって私を倒したんだもん」

「騎士団長を?」

「そうだ」

「嘘は良くないと思いますが?」

「なら戦うかい?」

(焚き付けんな!)

「望むところ」

「嫌なんやけど!?」

「問答無用!」

勇者は剣を抜きスズランに斬りかかろうとした、その時。

「止めんか」

後ろから勇者の腕を片手で掴み止めた者がいた。

『!?』

一同騒然である。

「失礼した、儂は『ネモフィラ』と言う者」

腕を掴んだ者はネモフィラと名乗る老人だった。

「久しぶりですねネモフィラ殿」

「元気そうで何より」

「お〜、ガレートとスカーレットか」

「…放してくれます?」

「おっとすまんすまん」

「…ネモフィラ殿なぜ止めるのですか?」

「単純じゃよ、この魔物たちは悪ではない、それどころか善の心を持ち合わせておる」

「…」

「納得できんか?」

「…はい」

「まぁ良い、それにお主任務はどうした?」

「…わすれてました」

「なら早く向かわんか」

渋々任務に戻る勇者だった。


「さて、すまんかったな」

「ネモフィラ殿もどうですか?」

「いや儂はまだ仕事があるのでなまた来るとするよ」

「ではお達者で」

「おう…じゃあな、スカーレット、ガレート…それと『すめらぎ』を持つスライムよ」

「皇?」

ネモフィラは姿を消した、謎の言葉を残して。

「…」

「再開しましょうかアリューン様」

「そうね」



演奏中

「姐さん」

「ん?」

「なんですか?皇って」

「…さぁな」

「何ですかね」

「やっぱりあの人なぞなぞ大好きね」

「…」

「姐さん?」

「皇か…」

「…さては何か知ってますね?」

「…ノーコメント」

「教えてくださいよ〜」

「…少しだけやで?」

「やった〜」



「皇ってのは能力スキルの1つや」

「どんな能力ですか?」

「この世にあることわりの範囲であれば絶大な身体強化を施す事ができる能力や」

「限界は?」

「う〜ん、わからん」

「わからない?」

「姐さん『皇』を所持してますね?」

「正解…ってネモフィラ殿言っとったやろがい!」

「どうりでランの『星剣』を直撃しても無事なわけだ」

「そう言うこと」

「流石姐さんです」

「それにしてもなんでネモフィラ殿は『皇』を知っていたのでしょうか?」

「さぁ?」

謎が解けたと思ったらもう一つの謎が出てきた。


舞台にて

「ねぇカスミさん」

「はい?」

「私達忘れられてない?」

「…そうですね」

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