第5話 スライムVS騎士団長

「…うぉ〜…気持ち悪」

「んみゅ?…どうしたの?ってスズラン貴女スライム状態だけど」

「思いっきり二日酔い食らった」

スズランが椅子の上でスライム状態からのグロッキー状態。

「スライムって二日酔いするんだ」

「お前さんは大丈夫なんか?」

「私飲んでたのジュースだし」

「そうやったな…うぇっぷ」

「えっ、吐くの?スライムって吐くの!?」

「まだ吐いとらんわ…でも時間の問題」

「とっ、とりあえずトイレ行こ、ね!?」

「みゅぅ…」

アリューンはスズランを抱きかかえトイレに向かった。

「大丈夫?」

「大丈夫…やない」

青いスライムがだんだん紺色のような濁った色になっている。

「…まさか」

「うっ、オロロロロロ」

「出たー!?」

スライムの中から虹色の粘液が出てきた、これは決してモザイクではなく、スライムの消化液である。

「大丈夫!?」

「…死ぬぅ」

「ちょっとサザンカさん呼んでくる!」


「…姐さん飲みすぎですよ」

「…すみません」

「とりあえずこれを」

「…ありがとう」

サザンカが渡したのは錠剤だった。

「これは?」

「シジミを使った栄養剤です、二日酔いに効くんですよ」

「へぇ〜、それってお手製?」

「いえ、冒険者ギルドで売ってました」

「…死ぬぅ…」

「姐さん入れますよ〜」

「ふぐぅ」

なんとサザンカはスズラン(スライム)の口ではなく体に直接ねじ込んだ。

「アリューン様スライムは口ではなく体に直接ねじ込んだ方が吸収しやすいんです」

「あっ、そう…」

「あー、染みる〜」

次第にスズラン(スライム)に彩りが戻ってくる。

『あのーそろそろ変わって貰えませんか?』

「あっ、すいません。姐さん大丈夫ですか?」

「おう、元気一杯や」

「それじゃあ出ましょ後が控えてるし」

トイレを出て待っていた人に一礼した。


数時間後 朝食中

「姐さんお客人です」

「むぅ?」

唐揚げを頬張っていたスズランに客が来た、とサザンカは言う。

「おはようございますスズランさん」

「おはようガレート、どないしたんや」

「実はですね、騎士団長がスズランさんと話をしたいと言ってまして」

「ふむ…いつや?」

「今日の午後です」

「…よしわかった、昼ぐらいにギルド行くわ」

「それでは」

「おう気をつけてな」


「何かあったの?」

「ちょうどええわアリューンお前さんも一緒に来てもらうで」

「何処に?」

「昨日行ったギルド」

「何故?」

「騎士団長が話したいんだと、一応アリューンも居たほうが話しやすいからや」

「ふ〜ん了解」

「アリューン様、朝食です」

「ありがとう」

「宮中の食事には遠く及びませんが…」

「あら、私からしたら結構豪華よ?」

「…は?」

「?だから私からしたら豪華よ?」

「失礼ですがアリューン様、どのような生活を送っていらしゃったのでしょうか」

「そうね、基本的には一日三食食べてお部屋にあった書物を読み漁ってたわ」

「それて食事の内容はどんなんやったんや?」

「朝はパンとお惣菜がランダムで、昼はパスタで、夜はお米と小皿に乗ったお肉だったわ」

「…まぁ貧民層よりはええか…」

「ですが仮にも皇女様ですよ…流石に腐りすぎでは?」

「…こらぁ早く解決せねばあかんな」

「?」



午後1時頃 冒険者ギルドにて


「ようガレート」

「スズランさんこんにちは」

「こんにちはガレートさん」

「おや、アリューン様も連れてきたのですか?」

「あかんか?」

「いえ、これと言って問題はありませんが…」(まずいな、ランはアリューン様を見たことがない…あいつの『へき』に刺さらなければいいが…)

「ギルドマスター、騎士団長が到着いたしました」

「…わかった、ここに呼んでくれ」

「かしこまりました」

「楽しみ〜」

「静かにしろよ?」

「もちろん」


「こんにちは、私はヨウ・ラン…で…す」

扉を開けて出てきた彼女の容姿は朱い髪、灰色のセーターにズボンと、まわりに溶け込みやすい格好だった。

「…ラン、どうした?」

「…貴女が…アリューン様?」

「?はい」

「かっ…」

「か?」

「かわいい…」

次の瞬間、騎士団長ランはアリューンを抱きしめた。

「ぴえ!?」

「な!?」

「…やはりか…」

「何しとんねん!」

「あっ、スズランさんですね?十年前は助かりました」

「いや、アリューンをホールドしながら言われても全然はなし入ってこうへんのよ」

「…はぁ、そろそろ離せラン」

「え〜、もうちょっとだけ」

「アリューン様が動けないだろ?」

「むぅ〜」

「た、助けて〜スズラン」

「いやどうにも出来ん」

「話が進まないから離せラン、今日はお見合いじゃないんだぞ」

「え〜」

「そのままだとアリューン様に嫌われるぞ?」

「むっ、それはまずい」

するとすぐ離れた。

「えー、とりあえず改めて紹介を頼む」

「私はヨウ・ラン、騎士団長だ。ついでにガレートの幼馴染みでかわいいものには目がない」

そしてアリューンの方をじっと見るラン。

「ぴっ…」

まるでひな鳥のように怯えるアリューン。

「ラン」

「はいすいません」

「それでは一応アリューン様とスズランさんにも自己紹介を」

「おう、私はスズラン、スライムでアリューンの国盗りの手助けをしている」

「続いてアリューン様」

「うん、私アリューン、一応元皇女で国盗りを企んでいます」

「かわいい見た目をして国盗りか…ギャップ萌え…ジュルリ」

「ヒッ…」

「ランいい加減にしろ」

「う、ごめんガレート」

「さてそれでは話し合いを」

「ちょっと待って」

「…なんだ」

「私は一応アリューン様が国盗りを企んでいることは知ってる、けどなんのために国盗りをするのかは聞いてない」

「アリューン…言ったれ」

「えっ、スズランに言われたからだけど?」

「「へ?」」

「なんでや!私関係ないやろ!」

「いや貴女じゃない、『カチコミ』するって言ったの」

「…あ〜言ったな」

「え、じゃあスズランさんが企んでるってこと?」

「…ノーコメント」

「スズランさん、話は署で聞きます大人しく連行されてください」

「まてまてまて、私はただただアリューンが可哀想だったからで…」

「まぁ、理由はどうあれ私としては賛成です、現状ギルドの資金はゼロに等しい、おまけに待遇も酷い」

「それなら私も賛成ね」

「なんで騎士団長様が国盗りに賛成されるのですか?」

「それはですねアリューン様、私は貴族からセクハラを受けまくっているのです」

「せくはら?」

「男貴族によくお尻を触られます」

「切り落とせばええのに」

「いや、流石にまずいですよ」

「もしやそれだけの理由でか?」

「いえ、他にも罪なき人を裁いたり、見世物にする国は嫌なので」

「まぁ、騎士団長が仲間なら頼もしいな」

「え〜っと、とりあえず今日の話し合いは終わりました…」

「ねぇガレートお願いがあるんだけど」

「なんだ?」

「闘技場借りて良い?」

「あぁ、何に使うんだ」

「スズランさんと模擬戦したくて」

「はぁ?」

「だって私スズランと戦ったことないもの」

「…スズランさんが良ければな」

「いやいや、勝てへんって」

「やってもないのに?諦めるの?スズラン」

「アリューン…流石に相手が悪い…絶対勝てへん」

「やってもないのに諦めるの?」

「だから私には勝てへんって」

「やってもないのに諦めないで!国盗りはできて勝負は出来ないの!?」

「…」

「だそうですよスズランさん」

「しゃあない、やるか」

「…計画通り」

「何か言ったか?」

「いや何も〜」



闘技場


「よし、それじゃあスズランさん、手加減無しで!」

「そうしな死んでまうわ」

「ちょっと待ったー!!」

「どないしたんやアリューン」

「スズランだけ素手じゃない!!」

「それが私の戦闘スタイルなんやけど」

「アリューン様、おそらくですがスズランさんは『近接格闘術』が主流の戦いをされるのではないでしょうか」

「近接格闘術?」

「文字通り格闘を主体とした戦闘スタイルで、タイマンならば強いですが集団戦になると不利になる、そんな戦闘スタイルです」

「ガレート試合開始の合図を」

「了解です」

ガレートは右手を上げ。

「試合開始!」

振り下ろす、と同時にランが先制攻撃を仕掛けた。

「ふん!」

パァン!と音が鳴る。

「はへ?」

仕掛けたラン本人も何が起こったのか理解出来ず妙な声を上げた。

「え、スズランが剣を素手で弾いた?」

「えぇ、そのようです」

「ならば!」

ランは蹴りを繰り出す、が。

「あ〜、あれは悪手ですね」

「よっ!」

スズランはランの足を掴み。

「わっ!」

投げた。

「凄まじい筋力ね…」

「流石は全世界最強のスライムと言ったところですね」

「初耳なんだけど…」

「でしょうね、スズランさんはあまり自分については話さないので」

「何かあったのかな?」

「さぁ?」


「やるなぁ!ラン!」

「ちょっとぉ!?なんで素手で真剣を弾けるのよ!?」

ランとスズランは戦いながらも話すほど余裕があった。

「スキル【剛拳】や!」

「そこまで固くならないわよ!」

「はっはっは!」

「くそぉ〜、なら私も本気で行くわよ!」

「こいやぁ!」

「スキル【星剣】!」

突如ランの持っていた剣が青色に発光した。

「死んでも文句言わないでよ!」

「死んだらなんも喋れへんわ!」

「喰らえぇ!!」

ランは剣を振りかざし、スズラン目掛けて振り下ろす。

「危な!」

スレスレで避けるスズランだが、次の瞬間爆発が起こった。

「やったか?」

「フラグやで?」

「!?なんで後ろに!?」

「ギリギリセーフといったとこやな」

「…は〜、私の負けね」

「いえ〜い」

「とんでもない試合ね」

「えぇ私も久しぶりにランの本気を見ました」

模擬戦は以外にも早く決着がついた。




ギルドにて

「…なぁ俺たちってさ、やっぱり冷遇されてるよな?」

「あ〜わからんでもない」

「酒は高いし鍛冶屋のおっちゃんは大変だろうな」

ギルドには専用の鍛冶屋が存在する。しかし決して儲かっているわけではない。

「そういえばこの間最高クラスの冒険者がおっちゃんに金渡してたぞ」

「マジか!?いや〜憧れるぜ、その冒険者ってのは?」

「聞いて驚くなよ?【金剛】の4人だよ」

「おいおい、マジか…」

「マジだ、やべぇだろ?」

「そんで幾らおっちゃんに渡したんだ?」

「なんと金貨6枚!」

「はぁ!?6!?」

この世界では銅貨100枚で銀貨分の価値、銀貨100枚で金貨と同等である。

例えばりんご1つで銅貨5枚ほど。

「すげぇなやっぱり最高クラスの冒険者となると報酬も破格だなぁ」

「ま、俺ら平凡組はチマチマ稼ぐしかねぇわな」

「だな」

男2人が楽しく話をしていると。

突然爆発音と衝撃が走った。

「な、なんだ!?」

「あ、皆様現在騎士団長が模擬戦を行っておられまして、恐らくその影響かと…」

「…この国には超人がよく揃うなぁ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る