第4話 勇者とギルマスと宴会と
「ちょっと、苦しいんだけど!?」
「お前さんはアホか?自分死んだことになっとるやろが」
「あっそうだった」
「変なとこで天然発揮してる場合やないんやで」
「うっ、ごめんなさい」
「わかればよろしい、さて仲間探しに行くか」
「手がかりは?」
う~ん、とスズランは顎を撫でながら考える。
「…冒険者ギルドに行ってみるか」
「お〜、行ってみたい!」
「…ほんまガキンチョみたいやな」
冒険者ギルドにて
「ここが冒険者ギルド?」
「そ、でもあんまりゆっくりしてられへんで」
「了解ー」
扉を開けると途端に騒がしい声が聞こえてくる。
「おぉここが冒険者ギルド」
「とりあえずカウンターに行ってみるか」
2人はカウンターの受付嬢の所へ。
「なぁ、マスターはおるか?」
「はい、ギルドマスターならいらっしゃいます」
「呼べるか?」
「申し訳ございません面会書がないと」
「むむむ、そうか…」
「?」
アリューンが不思議そうにスズランを見つめる。
「その必要はない」
「あ、ギルドマスター」
「面会なら構わん、こちらへ」
突如として現れたギルドマスターに2人は連れて行かれた。
「さてすまないな客人、茶も出せないで」
「かまへん、そんでえらい良い地位に就けたなぁ?」
「…そういじめないでください、成り行きですよ」
「?」
アリューンはずっと何がなんだかわからないままであった。
「それで、スズランさんそちらの女性は?」
「こやつはただの世間知らずのお嬢様や」
「…スズランさんの嫁ですな?」
「はっ倒すぞ貴様、スライムに性別は無いやろ」
「冗談ですよ、それで俺に何か用がここに来たのでしょう」
「…こやつはアリューン、国に捨てられた可哀想な
「アリューン?たしか事故で亡くなった皇女ですよね?なぜここに?」
「実はカクカクシカジカ」
「なるほど、ですがたしかドリュズは婚約者では?」
「そうなんか?アリューン」
「えぇ、見た目や権力、財力は最高位、でも性格が死んでるわ」
「そうでしょうか?彼はかなり優しい人格の持ち主でしたよ?」
「外面はそう、でも内面は違う。あんなの猫の皮を被った低俗野郎よ」
「とんでもないパワーワードが皇女様から出てきたで」
「な、なるほど人は見かけにはよらないってことですね」
「まぁその話は置いといて、国盗りすると意気込みはええんやけど、なにせ相手は国、兵士が相手では分が悪すぎる」
「そこで我々冒険者が助太刀いたす、と」
「それもええんやけど、流石に冒険者は国盗りに賛同せんやろ」
「ふふふ、わかりませんよ?なにせ冒険者は貴族層に並々ならぬ嫌がらせを受けていますのでかなりの冒険者が賛同してくれると思います」
「ほほう、それはそれはええ話聞いたわ」
「ねぇ、私の存在忘れてない?」
「忘れてない忘れてない、膨れなさんな」
スズランはアリューンの頭をナデナデする。
「むぅ、子供扱いやめて」
「そうゆう奴ほど子供なんやで?」
スズランはアリューンをおちょくるように返す。
「…///」
しかしアリューンは嬉しかった、単純に嬉しかった。アリューンは産まれてすぐに才能が無いと両親に言われ、部屋に監禁され続け、しまいにはクズ男と婚約される、そんな人生に華など無く、ただいつ幸せは来るのだろうとそう思っていた。
そんなアリューンに優しくしてくれる人として当たり前の事をしてくるスライムにアリューンは温かみを感じていた。
「…ん?アリューン?」
「…うへへ///」
「どないしたんや?」
「惚けてますね」
「愛玩動物みたいやな」
「まぁ、アリューン様はそのままで話を続けましょう」
「そうやな、ガレート」
今更であるが冒険者ギルドのギルドマスターの名はガレートと言う。
「まずは国の軍隊をどうにかする必要があります」
「…昔と比べてどうなったんや」
「ざっと、5倍」
「…はぁ500万の兵士相手にどう立ち回るか…」
「そこはスズランさん得意の話術の出番では?」
「話の通じひんクソ野郎に魔物との交渉が通じるかいな」
「いえ、交渉するのは国王ではありません」
「なら王妃か?」
「騎士団長です」
「なおさら無理な話しやろ」
「そんなことはありませんよ?これでも俺は彼女と幼馴染みなので」
「そうやったな」
「あいつは今の国王の政治には異議を唱えてました、ならば丸め込めるのではと」
「ふむ、騎士団長か…悪くないな」
「では騎士団長に連絡しておきます」
「たのむで、さて帰るぞーアリューン」
「ふぁあーい」
どうやらアリューンは眠っていたようだ。
「ホンマにどないしたんや…」
「さぁ」
スズランがアリューンを連れて帰ろうとしたその時。
「ギルドマスター!!」
受付嬢がえらく慌てた様子で入ってきた。
「ん?どうした」
「実は勇者一行が…」
「勇者がなぜ…」
「勇者…」
「ここから魔物の匂いがする」
扉からいかにもな装備を身に着けた男が現れた。
「魔物?」
「ギルドマスター、どういうことだ?どうして魔物の匂いがする。答えていただきたい」
「気の所為ではないかね」
「だが確かに匂いがする」
「ここにいるのは君と私とそこの受付嬢『だけ』だと思うが?」
ギルドマスターはここにいるのは3人だけと言った。ならスズランやアリューンはどこへ行ったのか。
『…まるで犬やな』
クローゼットの中で隠れていた。
『うへへへ』
アリューンは相変わらず理性がぶっ壊れたかのようにスズランをホールドしている。
「…ふんふん、ここから魔物の匂いがする」
勇者はスズランたちのいるクローゼットの前までやってきた。
「そこか!!」
勇者は勢いよくクローゼットを開ける。
しかし。
「?何もない」
誰もいなかった。
『危な〜、危うく絶対魔物殺すマンに殺られるところやった』
スズランはクローゼットの中に居る。
『うへへへ…ジュルリ』
理性の欠片もないアリューンも居る。
「気の所為か…」
「まったく、人様のクローゼットを開けないでいただきたい、勇者の特権は乱用するものではないぞ?」
「すまないギルドマスター、思い違いだった」
勇者は去っていった。
「はぁ〜」
ガレートは疲れ切ってソファに座る。
「さぁ、仕事に戻りたまえ」
「あ、はい」
受付嬢も持ち場に戻った、これでガレート1人。
「…怖っ」
「ぐヘヘヘ」
怯え切ったスズランと暴走状態のアリューンがクローゼットから出てきた。
「どうやって勇者を騙したんですか?」
「クローゼットの壁に見えるようトリックアートに擬態してた」
スズランはクローゼットの壁に擬態していたという。
「なるほど、では魔物の匂いは?」
「…アリューンの服を私の中に取り込んで騙した」
「なるほど、それで勇者の鼻から逃げれたのですね」
「とはいえアリューン大丈夫か?その、気持ち悪かったとか」
「ふぇ?」
「大丈夫かって聞いてんねん!」
「う~ん少しヒヤッとした程度?」
アリューンは正気に戻った。
「急に戻ったな」
「?」
「もうすぐ日が暮れます、気をつけてお帰りください」
「すまんなぁガレート、ほらアリューンもお礼を言わんかい」
「いえいえ」
「ありがとうございました?」
「なんで疑問形なんや」
「記憶無いの」
「都合のええ頭やな、じゃあなガレート」
「お気をつけて」
「…サザンカこれは何や?」
酒場にて
「もちろん姐さんの子分ですよ?」
子分の数は50人を超えていた。
「たった半日でよー集めたな」
「姐さんの御用とあらば皆駆けつけますよ」
『姐さんのためならば!!!』
「…人望が厚いのね」
「…まぁ、うん」
「あと皆姐さんと飲みたいらしいです」
「なんかそっちの方が本音な気がするんやが?」
『…』
「否定しろや!!」
「飲む?何を?」
「お酒ですよ、アリューン様」
1人の女性がアリューンの質問に答えた。
「お、久しぶりやな」
「お久しぶりです姐さん」
「貴女は?」
「申し遅れました、私グロリオサと申します、皆からはグロリオと呼ばれてます」
「アリューンちなみにこいつは冒険者をやっとる」
「一応最高位クラスの冒険者です」
「なんで貴方の部下は大物しかいないわけ?」
「そら私の育てがええからな」
「自分で言う?」
「実際私達は姐さんを本当の母のように思っています」
「それはそうと、姐さん、アリューン様何か飲みます?」
グロリオが2人に何を飲むか聞いてきた。
「そうやな、普通に酒で」
「…種類は?」
「任せるで」
「承りました、アリューン様は?」
「うーん」
「とりあえずジュースでええんちゃう?」
「…えーっと、ジュースでよろしいでしょうか?」
「うん」
「承りました」
そこからは宴会だった、飲めや歌えやの大騒ぎ、アリューンは最初こそついて行けなかったが次第にのめり込んで行った。
同刻ギルドにて
「久しぶりだね、ガレート」
「十年ぶりだな、ヨウ・ラン…いやスカーレットと呼ぶべきかい?」
「ふふ、どっちでもいいわよ…ガレートならね」
「それは嬉しいね、ならランと呼ばせてもらうよ、昔のようにね」
「それで?私を呼び出した訳を聞こうかしら?」
「…アリューン皇女が生きていた」
「…冗談?」
「ほんとさ、しかもスズランさんを連れてね、いや正確にはスズランさんに連れられてか」
「…あの貴族までも腐ってたわけね」
「そのようだ、おそらく8割の貴族は腐敗している」
「それで?」
「なんとびっくりアリューン皇女が国盗りをすると言い出したらしい」
「…はぁ?国盗り?」
「その反応はわかる、しかしこちらにはスズランさんがいる」
「…スズランさんかぁ、となるとあの組織が動き出す訳ね?」
「おそらく、しかしアリューン様は武力制圧は望んでないだろう」
「無謀だわ、武力行使なら可能性あり、しかし話し合いでは何の策もなく散る」
「だろうね、そこで君の出番さ…ラン」
「なるほど、私の人望と名声を利用し帝国国民のデモを起こすわけね?」
「物わかりが早くて助かる」
「ふふふ、そりゃあ幼馴染みですものよーくわかってるわ」
「それじゃあ頼んだよ、ラン」
「りょーかい、おやすみガレート」
「おやすみラン」
(さて、どうなることやら)
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