幕間 盛岡慎也
オレが
親同士の仲がよく兄妹のように育てられてきたオレたちは幼稚園、小学校、中学校、そして高校までも同じところに通った。
美香は小学校から持ち前の美貌で数々の男の心を鷲掴みにしてきた。本人は無自覚だろうがアイツはやたらと距離感が近い。幼い頃から異性のオレと遊んできたからというのも理由にあるだろうが、愚かな男を勘違いさせるには十分だった。魔性の女だ。
オレと違って美香は友達がたくさん増えていった。オレはといえば悪ぶれていく日々。世の中の理不尽や人間関係の複雑さに辟易して、もうなんもかんも嫌になった。それでも美香はオレと関わるのを辞めなかった。美香といるときは居心地が良かった。
ああそうだ、認めよう。オレは
それでもオレは勘違いするようなヤツとは同じじゃない。美香がオレのことをただの幼馴染としか思ってないのも好きな男がいることも知っていた。
多分美香は恋愛に憧れを抱いているのだと思う。昔から取って付けたようなイケメンに惚れるのがまるわかりだ。男を見る目がねえヤツだよ。
別に恋仲になりたいとは思っていない。幸せになってほしいのだ。
ただ美香が好きになる男は女を幸せにする甲斐性がないヤツばかりで。そう、アイツだって――
ちゃんと告白ができたのだろうか。美香が渡り廊下から小走りで校舎にやってきた。
告白が失敗していてほしい。でも、悲しんでほしくない。なんて、オレも大概クズだな。
オレは美香の前に姿を見せた。――美香は泣いていた。
オレに気づくやいなや、視線をそらして歩き出す。無視するつもりらしい。
「なあ……」
美香は応えることもなくスタスタと歩いていく。待てよと肩に手をやると、濡れた瞳で射るように睨まれた。
オレはまるで心臓を掴まれたかのような気分になった。
「なに? なんでいるの? 待ち伏せ?」
「いや、その大丈夫か?」
「質問に質問で返さないでくれる?」
普段はこんなに冷たくない。美香をここまでさせたアイツに沸々と怒りが湧いてきた。
「……アイツはそんなにいいヤツじゃねえよ」
「……ッ! そんなの慎也には関係ないじゃん! 話しかけないでよ!」
失言だ。
「あ、ち、違っ――」
美香は強引にオレの手を引き剥がすと階段を蹴るように去っていった。もう、最悪だ。
「オレはただ、美香に幸せでいてほしいだけなんだよ……」
呆然と立ち尽くしていると外からツカツカと近づいてくる音が聞こえる。きっと、アイツだ。
あんなヤツ、顔がいいだけだろ。女はバカだ。顔がいいってだけで男を好きになったりして、そいつが自分を不幸にする可能性とか考えないのか?
ああ、ムカつく。ムカつくけど、冷静になろう。そうだ、別にアイツが悪いわけではない。これは仕方のないことだった。だから、アイツに怒りをぶつけるのはやめよう。そんなの、ダサいだけだ。
――まあでも、アイツは美香を二度も振ったことに対してどう思っているのかな。
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