日山颯太
「チッ、てめえが前かよ」
俺が隣の席の人の誤解をどう解こうかと頭を抱えていると、これまた頭を抱えたくなるやつが俺の後ろに来た。
「チッ、お前が後ろかよ」
「あ? 文句あんのか」
「お前が先に言ったことだろ……」
俺も盛岡に対して強い口が聞けるようになったもんだ。盛岡は相変わらず不機嫌を隠そうともせず顔に出す。盛岡の隣の女の子ビビっちゃうよ。視線を右往左往させてるし……居心地悪いんだろうな。
それは俺の隣の女の子も例外ではないらしい。なんか一気に大人しくなった。
「こうやって見ると盛岡って
「んなわきゃねえだろ」
「え? それまじで言ってる?」
「いい加減俺もキレるぞ?」
「ヒェッ! すんません!」
声がマジだった。
「おーい、席に着けー」
後藤が間延びした声で指示を出す。それからみんなが座ったあと、すぐさまホームルームは解散となった。なんというか、あっけない。
しかし解散した後も、生徒達は部活に行くでもなく席替えの結果についてあれやこれやと言い合っている。あっけなく思っているのは俺だけのようだ。ちなみにそんな俺は席替えについてわざわざ語り合う友達などいないから部室へと向かう!
「御行、葉月さんとかなり離れちまったな」
「お? おう、そうだな」
白井がいた。
「いやー、残念だ。仲良くなれたから近くの席がよかったんだけどなー」
「あー、そうか。そうだな」
毎度毎度こいつはよくこんな恥ずかしいセリフを言えるよなと思う。俺には無理だ。
「それにしても葉月さんの隣はサッカー部の
白井の言葉に俺はその人物へと視線を送る。高身長の細身でセンター分けのイケメンだ。今は同じサッカー部の男子数人とワイワイ談笑している。
白井は小馬鹿にするように話を続ける。
「うわぁ、バリバリ陽キャ……俺、あいつ嫌いだわ」
「なぜに?」
「DQNじゃん」
「えぇ……」
サッカー部の
先にも述べたが日山颯太は性格もいいのだ。白井はDQNと言ったが俺にはそう見えない。男女隔てなく、当たり障りなくコミュニケーションを取る姿はどことなく俺にシンパシーを感じさせる。俺と違うところはそのコミュニケーション能力か。
「あの量産型センター分け野郎どもが……人の迷惑になってんだよ」
「ははっ……」
まあ確かに日山颯太に絡んでる人達は周りのことなど考えずに騒ぎ立てているが、
「少なくともそうやって呪詛を垂れるお前よりは日山のほうが良くできた人間だわなぁ」
「うぐっ」
白井にクリティカルヒット!
「白井も髪型整えたり眼鏡からコンタクトにしたらモテるんじゃねえの?」
「現実はそう甘くない」
「実践したの?」
「……してませんが」
「だろ?」
こういうところが白井を陰キャたらしめるんだろう。まあ俺も人のことを偉そうに言える立場ではないけどね。
「くぅ、御行はあんなやつの味方をするのか!」
「別に味方ってわけではないけど」
「くっそー!」
白井がダッシュで逃亡。放課後の自主は教室でやるのだがいいのだろうか。まあ荷物は机の上に置いたまんまだしいいか。
「やべぇ、言い過ぎたかな」
俺は大した理由なく人を悪く言う人が嫌いだからな。まあ、あんなことを言ってしまうのが俺の悪いところであり、人から嫌われる要因なのだろう。中学の頃の反省を全くもって活かせてないじゃんか……。
「何突っ立ってんだ、西園寺。ほら、部活行くぞ」
「あ、うっす。……いやいや、俺よりも盛岡でしょう」
「盛岡はもう行ったぞ」
「あ、さーせん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます