第3話 魔王とSMS
「な、なんだこれは!? ユーナの……スリーサイズだと……!?」
目が釘付けになり、すぐにでも確認したくなる内容だ。
けれど、確認してはダメな気がする。
私はその項目を開いてはいけないと思ったのだ。
なぜなら。
「てか、誰が調べたんだこれ!? 誰かがユーナの身体をペタペタと触ったとでも!? くっ! どこのどいつだ、ぬっころしてやるッ」
好奇心より遥かに勝る殺意。
ざっけんなよ! 私だってユーナをぎゅっとした上で、彼女のサイズを存分に確かめたいってのにさッ!
気がつけば、私は願望を声に出していた。
あぁ、そうさ。私はユーナをこれでもかってくらい、愛しているんだ。
種族の違い? 関係ない。
愛は国境も種族も超えると私は信じている。
それにしても、ユーナ・ステラレコードの好きなタイプとか、好きな食べ物とか、そういった情報はまだなかった。
ユーナはまだ駆け出しの勇者。そんな彼女の情報は現状スリーサイズのみ……!
これを書き込みした魔王軍のヤツ、あとで調べて闇に葬っとこう。
ユーナに私以外が触れていいわけないだろ?
マジでぬっころすぞ。
「……いかん。こんなことを調べるのは魔王として、男として情け無い。やめよう」
私は画面を下へスクロールして、スレ主への返信コメント欄に【魔王ですけど、おまいぬっころす】と書きこんでおいた。
次に、私は魔族で最近流行りのSMS(ソーシャル魔法回線サービス)である、〝ドヤッター〟のマイページを開く。
私は魔王軍の頂点にして魔王。いちおう、魔王ヨーケス・ブーゲンビリアの本名で〝ドヤッター〟のアカウントを持つ。
フォロワー魔族数は200万魔族。
これは私が魔王として君臨したことで、フォローしてくれた者たちだ。
その魔族の皆へ、私は一言メッセージを入れる。魔法文字をぽちぽちと、右手の人差し指で打ち込んだ内容は。
【勇者に手を出したら、おまいらぬっころす】だった。
これでいい。
私のユーナにおいそれと手を出してみろ? 地獄の炎すら生温かく感じるほどの、煉獄の炎をくれてやる。
と、内容を送信したその時だ。
ピコン! と魔導水晶板にメッセージが入る。これも、ルーググ先生ならではの開発。
念話で魔力を消費しないために開発された
送信元の宛名は【四天王エツィー・ドゥガー】と表示されていた。
「四天王でも最弱なエツィー……? 私に直接DMするとは、はて?」
私が魔導水晶板の画面のエツィーの名前に触れると、メッセージが表示される。
その内容はこうだ。
『魔王様、勇者に手を出してはいけないとは!? 魔王軍一同、困惑しているゴリ……しています!』
私ほどの魔王となれば、文章から他者の感情など容易に感じとれる。顔は見えないが、おそらくヤツは焦り、小さな汗をかいてるに違いない。
しかし、私は返信することなく、画面をそっと閉じていた。
最近よく言われる既読スルーってやつだ。
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