モズのはやにえ

 嗚呼ああ嗚呼ああ

 我が主君よ。


 何故、何故なのですか、

 我が主君よ。


 わたしは、貴方様の為に、この手を染めて参りました。


 なのに、何故、わたしは貴方様の凶刃やいばによってこの身を貫かれているのですか。


 ……。

 …… ……。


 嗚呼、嗚呼、なんということか。

 わたしは貴方様に必要とされなくなったのか。

 嗚呼、嗚呼、なんとかなしいことか。

 わたしは貴方様の百舌鳥もずにはなれなかったのか。


 実の親に捨てられ路頭に迷っていたところを助けて頂いた時から、

 お慕いしておりました貴方様。

 貴方様が望むことは、このわたしがすべて叶えて差し上げて来ましたのに。


 これが、その報いか。


 わたしは、今から貴方様の凶刃によって息を引き取り、

 貴方様が今度はわたしのためだけの百舌鳥となるのですね。


 さあ! 遠慮はりませぬ!


 貴方様のその刃はわたしのしんを断罪する正義!

 貴方様のその刃はわたしのたいを貫く正義!


 なれば、迷うことは無いのです。


 ひと思いに、わたしを突き刺し、生けにえとして国にささげるのです。

 最期さいごに貴方様の手を、わたしの血で染めることの、それは、なんと喜ばしいことか。


 貴方様がわたしのことを忘れぬ限り、

 貴方様は、わたしに捕らわれたままだ。

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