額縁

ああ、額縁とは。

こうも簡単に、僕と君を隔たることができるんだね。


君を描くために買った。

愛しい君を描くために。


それなのに、

この「額縁」は僕らの愛を引き裂かんばかりに、僕らの間に常にいる。


君を描くために買ったのに。

愛しく思う君を。


それなのに、

この「隔たり」は僕から君を遠ざける。


愛しく思っていたはずの君だった。

僕はこの「額縁」のなかに君を納めてしまいたくて。

たまらなくて、

仕方がないんだ。


君がいる。

君が、僕の目の前に飾られている。

閉じ込めたのは誰だっけ。


わからなくてもいいか。

そう思いながら、

僕は君の口元に、口を重ねる。


油絵の具のにおいと、

ルージュが混じりあった君の香りに、

僕は今日も溺れていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る