まゆなかから

さあ。

目を開けて。

君は今日から自由だ。


目の前に立つ、あの白い柱が見えるかい?

こんなに暗い繭の中で、たったひとつだけ。

見えたなら、君は向かわなければならない。


え?

まだいきたくない。だって?


わがままを言っちゃあいけないな。

この繭の中から出たがっているやつは五万といて、その中から君が、君だけが今回選ばれた。

だからこれはチャンスなんだよ。

君が、外の世界へと飛び立てる、唯一の手段なんだ。


"わかった"?

それは良かった。


ではいこうか。

あの白い柱のもとへ。


え? 僕はいかないのかって?

生憎と、僕はまだこの繭でやらなければならないことがあるからね。

君とは一緒にはいけないんだ。

だけど不安になることはないよ。

外の世界は、君のことが待ち遠しくて仕方がないんだ。


さあ。

いってらっしゃい。


君は今日、繭の中から飛び出す。


そうして君は、今日、「命」を得る。

そして今日が、君の「誕生日」になるよ。


繭中に戻ってくるのはおすすめしないから。

せめて君は幸せに。

愛されて生きていけ。

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