第二話 「魔法」??ない!ない!ない!

コツコツコツと足音を鳴らせ、私は両親や妹が待つ食堂に向かう。


 一応、代々「エスプランドル」家の家系は、「公爵」「候爵」「伯爵」「子爵」「男爵」「準男爵」「ナイト爵」の中で言うと、「伯爵」の位にあたる。


 だから、其れなりにメイドさんや執事さんも数名居てる。


 基本、私自身が全然、公爵だのぉ何だのぉって分かって無いのに適当に小説の設定を書いたもんだから「しきたり」何て正直…めちゃくちゃな筈…。


 まぁ…なんとかなるでしょ?いや…なんとかし無くては…。


 私が食堂の前に立つとドアの両脇に立っていた、「ドアマン」…で良いのかしら?


 が、食堂の扉を「ガコンッ」と開けてくれた。其処には私の両親や既に席に着いており妹のセラススも私を今か今かと待っていた。


 此処で私も一応令嬢らしく「お早うございます。お父さまお母さま。お待たせして申し訳ございません」などと挨拶をしてみる。


「おおっ…来たかステルラ今日も見目麗しいな?黙って立っていたら立派な令嬢に見える」


「お早うステルラ本当にそうやって立っているだけで、どこからどう見ても立派な令嬢に見えるわ」


 なぬっ…?今さらりと失礼な発言が聞こえたぞ?


「本当にねぇーお姉さまは黙って立っていたら、立派な令嬢に見えるのに」


 セラススッお前もかっ!!何?その立っているとか黙っていたらとかっ!


 あれぇ…?こんな設定だったっけ?まっまぁ…良いや…兎に角席に付かなければ話しは進まないし…。


 席に着くと食卓には、立派なテーブルの上に真っ白で綺麗な麻の、テーブルクロスその上には見事な迄な豪華な朝ご飯。


 分厚いベーコンエッグにサラダにスープに果物…う…朝はお漬物と、ご飯にお味噌汁が良いんだけど…当然有る訳ないし。


「皆が揃った所で、頂くとしょう」


 父の一声で、朝食が始まった。暫くカチャカチャと皆が、食べてる食器の音だけしか聞こえて無かったけれど…セラススが。


「所でお姉さま?魔法の方は少し上達しましたの?」


 ングッ…魔法ぅ?…って?えーっと…?

 私は、危うく飲みかけたオレンジジュースを吹き出す所だった。セーフッ!


「えっ?魔法?魔法って何の事かしら?セラスス」


 その一言で、両親を始め妹のセラスス迄もが手に持ってたナイフやフォークを「カシャーン」とお皿の上に落とす。


「お姉さま!何を言ってらっしゃるの?魔法を上達しなくてはいけません」


「ステルラ…魔法から逃げては駄目だぞ?お前は出来る子なんだ!」


「そうよ?ステルラ?貴方には、私達家族が付いているわ?だから現実から逃げては駄目よ?」


 えぇえぇえ!ちょっ…ちょっと待ってよ!

 魔法ってマジ何よ?私の小説の中には、魔法何て言葉は無いよ!


「…お姉さま?おーいっお〜ね〜ぇ〜さま〜」


 セラススは私の顔の前に手をブンブン振っている。


「ハッ!!ごごめんなさいっつい遠くに行ってしまいました」


「お姉さまったら、本当に見た目はクールで見目麗しいのに、中身はポンコツなんですもの…セラスス困ります」


 ポッッ!!……ンコツ…確かに設定では、そうしたのはこの私…前世で、姉には何かと、お世話になったから(違う意味でのお世話ねっ元カレ取られるわで…その他にもetc)


 せめて自分が書いている、小説での中は、外見は超が付くほど見目麗しく中身は超が付く程ポンコツにしてやるっ!と思ってました!っが!まさか自分に、返って来るとは…悪い事は出来ません。


 魔法だのとは…設定には無かったけれど…

 此処に転生した以上「郷に入れば郷に従え」よね?


 よぉおぉおしっ!やってやろうじゃ無いよ!上等よっっ!!私が、自分の小説に転生したからには私が主人公よ!完っっ璧な!!スーパーミラクルビューティー…えーと…んーと…。


「ステルラ・エスプランドル」を成し遂げてやろうじゃ無い!!


 魔法だろが妖怪だろうが…妖怪は違うか…。兎に角何でも来やがれっ!よ!


「おーほほほほっおーほほほっ」


 いきなり口元に右手首斜め45度に上げ高笑いしたもんだから…両親も妹も心配そうに。


 両親・妹「「ステルラ」「お姉さま」が壊れた…」


 フンッ何とでもおっしゃい!今に見てなさいよ!


 この自分が書いてる小説に転生した以上ポンコツなんて言わせないんだからっ!


…でも…後にも先にも、私が「魔法」と言うワードを使う事は無かったのだ。てか、私の中で「無かった」事にした…と言っても過言では無い…。

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