第9話 やきもち焼き
僕は翔に昨夜心配をかけたことを謝った。
「昨日はごめんなさい。僕、翔がずっと洋一さんとばかり仲良くしていて、面白くなくて、先に帰っちゃった。でも、そのまま帰るのも嫌で、新宿に遊びに行っていたんだ」
「新宿だって⁉」
翔が叫び声を上げた。
「あんな繁華街にお前一人で出かけるなんて無謀だろ!」
「・・・うん。無謀だった。新宿の街中で道に迷っちゃって、行き着いた場所が二丁目だったんだ」
「に、二丁目? お前、それ、本当なのか?」
「うん。本当だよ。それでね、僕も初めて聞いたんだけど、二丁目の公園、発展場ってところになってるんだって。ゲイの人がエッチする人を探す場所らしいんだけどね。そこに僕、知らずに迷い込んじゃって、おじさんに襲われそうになっちゃったんだ」
「おい! そんなこと今初めて聞いたぞ。まさかそのままそのおっさんと・・・」
「大丈夫。ちゃんと僕、こうやって生還してるじゃん。僕、おじさんに手を出される前に何とか逃げ出したんだ。それでね、二丁目のゲイバーの人に助けてもらったんだよ。そこで知り合った僕と同い年のゲイのカップルの子たちにも助けてもらって、おかげで昨夜は家まで帰って来られたんだ。いっぱい心配かけたよね。翔、ごめん。本当にごめん」
謝る僕を翔はそっと抱き寄せた。昨日、竜二が大地を抱き寄せたように。僕は嬉しくなって翔に抱き着いた。
「まったく、お前も人騒がせなやつだな。だったら、今度そのゲイバーにお礼を言いに行かないといけないじゃないか」
「うん。行こ行こ! そうだ。あのね、そこで知り合った大学生カップルの子とも今度翔も交えて一緒に遊ぼうって言ってるんだ。いいかな?」
「ああ。そいつらにも世話になったみたいだしな。俺からも謝っておかないと。うちのバカ嫁が迷惑かけましたってな」
「バカ嫁ってひっどいなぁ。もうちょっと言い方ないの?」
「んじゃあ、愚妻って言っておくか?」
「何それ。そんなもの却下に決まってるでしょ! そもそも、翔が洋一さんとばっかり仲良くしたのが原因なのに。僕だけ悪者にしないでよね」
「それは・・・その・・・すまん。一郎が洋一にまで嫉妬するとは思わなくて・・・。でも、洋一にまで嫉妬するんだな、お前」
翔はそう言うとクスクス笑い出した。
「だって、仕方ないじゃん。僕より洋一さんの方が翔のことわかってるような気がして面白くなかったんだもん・・・」
「もう、一郎可愛いよ。すぐに妬いちゃうんだもんな。やきもち焼きで困っちゃうな」
「むぅっ! 翔のバカバカ!」
「あはは、可愛い、可愛い。あ、そうか。やきもち焼きか。やきもち、やきもち・・・」
翔が何かをぶつぶつ呟いている。
「翔?」
「あぁ、俺、もち食いたくなったな」
「お餅? お正月に食べるやつ? もうさすがに季節外れだよ。もう春だよ、春。新年明けてから四か月目だよ?」
すると、翔はニヤッとして僕を見た。
「ちげぇよ。お前のもちだよ」
「僕のもち?」
判然としない僕の手を引いて、翔はアパートの部屋まで戻ると、敷きっぱなしの自分の布団の上に僕を押し倒した。
「え? ちょっと、翔。いきなり何するの?」
「これからお前のもちを食うんだよ」
「は? 僕のもちってさっきから何言ってるの?」
「いいから、服を全部脱げ。俺も脱ぐから」
え? 何? エッチするつもりなの? エッチとおもちと何の関係があるんだろう。
全裸になった僕を、やはり全裸になった翔が抱きしめた。昨夜、翔に触れることができなかった分、僕の性欲もすぐに高まって股間が固くなる。僕らは熱いキスをしながら互いの身体をまさぐり合った。
翔が僕の首筋から乳首、お腹、そして性器へと舌を這わす。「あんっ」思わず喘ぎ声が上がり、身体がビクンと反応する。
「一郎の反応はいつも可愛いな」
翔がうれしそうにそう言った。
「翔がエロいからだよ」
僕がそう答えると、翔はフフッと笑った。そして、
「じゃあ、そろそろお前のもちをいただくぜ」
と言うなり、僕をうつ伏せに寝かせて僕のお尻を揉み始めた。
「お前のケツ、餅みたいにすべすべもっちもちで触り心地いいもんな」
もちってそういうことかよ!
「いっただっきまーす」
そう言うなり、翔は僕の上にまたがって、僕のお尻の中に自分のブツを挿れ込んだ。
「あ、あんっ!」
「ほら、可愛いもちが可愛い声を上げてやがる」
もう! 翔のド変態!
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