episode02 接続者
突然だが一本のゲームを紹介しようと思う。
タイトルは「ワールドエンドウォー」。
新進気鋭の個人クリエイターが制作。
そのクオリティーは大手ゲーム制作会社すら圧倒し国内売上本数一千万本越えという偉業を達成した名作だ。
異世界より日本に来訪した
そんな物語の序盤、初めて主人公が対峙する
身体から生えた無数の白い触手が初見だと不規則にしか見えず、相当苦労した思い出がある。初っ端から初心者泣かせの敵はゲーマーの間でも賛否分かれる敵だ。
「説明は後にしてくれると助かります。今はアレに集中したい!」
少女は凄まじい速さで走り触手の攻撃を躱し時には、手に持つ短刀で斬っていき道を作っていく。
あれはスクロールの行動パターンを把握している動きだ。一見不規則に視える触手攻撃も観察を怠らなければ対処出来ないものではない。
華麗な回避テクニックに触手は全方位から覆うように獲物目掛け襲う。
見物人と化していた僕の視界に捉えていたはずの彼女は消えてしまう。
どこに消えたかと言えば少女は跳んでいた。
跳躍。
音もなく跳んだ少女の短刀はもうあの邪魔な触手に遮られる心配はなく、人を殺す化け物に深いダメージを与え滅殺した。
正直滅殺という言葉が本当にあっているか僕には分からなかった。
なにせ斬られたスクロームは、黒い靄に変化し大気に分散。それでアレが死んだのか、僕には判断がつかないからだ。
「これで一匹。だけど
「やるって何を?」
離れた場所から戻ってきた少女は手の甲を確認し何かを呟くと突然僕に言葉を投げるがさっぱり意味は不明だ。
何故か僕の名前を知ってる点も不思議。
「柚子さん、離れて下さい。ここは危険です」
「あにぃをどうするつもり?」
「ご心配なくヤマトは私と戦います」
「???」
「あにぃが戦う何を冗談言ってんの」
「冗談ではありません。兎に角柚子さんは離れて、アイツらの狙いは他でもないヤマトなんですから」
「はぁー!!!!!!!!!」
危機的状況は今だ変わらずだというのに、妹は人を何の躊躇いもなく殺すスクロームと戦うヒノミと口論する。
よくそんな気概持ち合わせていると感心していると聞き捨てならない言葉が飛び出す。
当の本人はお構い無しの会話で飛び出たヒノミの発言に思わずも情けない叫び声を上げてしまった。
「無理強いは記憶領域に負担をかける恐れがありますが仕方ありません」
「ちょっと待って何をし」
「
ヒノミが僕の手を握り、肌が触れあった瞬間軌跡へと導かれる道筋は整った。
銀箔の光沢がコンクリで固められた冷たい大地から吹き上がり、夏の熱さとは非なる温かさに身が包まれる。
正直何が起きたか解らなかった。
「これが僕……?」
いつの間にか見たこともないオーラのような何かに覆われ、右手には見たこともない剣が自然と指先まで馴染むように握られていた。
そして身体が軽い。
まるで自分じゃないみたいだ。
「ごめんなさい身体を貸してもらいます」
少女は忽然と姿を消したにも関わらず、不思議と声だけが心に語りかけてくる。
すると身体の主導権が自身から離れて切り替わるのが僕にも分かった。意識だけが残り指先に至るまでの感覚がないのがその証拠。
「シャァーーーーーー」
広場に現れたスクロームは全部で六体。うち一体は既にヒノミが殺害残りは五体。
僕の服装が変質しヒノミに身体の所有権を強引に奪われ戦闘態勢が整えば散らばっていたアイツらは一斉に狙いを定め突っ込んできた。
咄嗟に逃げないとと念じたがやはり身体は言うことを聞く筈もなく、これまた謎に腰回りに現れた鞘に納刀した。
いやっ、ここで武器をしまうなよ。
ヒノミに警告するように思念しても届くかは分からない。でもそれしか方法はないのも事実。
「安心して下さい」
「“一閃”」
鞘から目にも止まらぬ速さで抜き繰り出された剣速は風の刃と化し敵を斬り刻む。
これにて勝敗は決した。
化け物は全て死んだ。
建物内部で様子を見守る傍観者達も盛大な拍手喝采で感謝を僕に送る光景には言葉が出なかった。
※※※
「友美さんあれって?」
「私に聞かないでよ誰なの一体……」
「ちなみに上からこの地に誰かを派遣したって報告は受けてません」
「でしょうね。彼を私は知らないわ」
「どうします帰りますか?」
間抜けにも帰るという選択肢を提示したパイロットに呆れつつも視線は彼に釘付けだ。
「なわけないでしょ」
「じゃあ」
「降りるわ。他の方々にも伝えて頂戴」
※※※
人々に絶望ではなく希望となる新たな来訪者が登場した。
テレビでの映像や時折街中を歩いていると上空から聞こえるあのヘリコプターのプロペラが回る音が盛大に聞こえ見上げるとヘリコプターの群れが滞空していた。
ヘリコプターから垂れ下がるロープより銃火器を手にした国を守る自衛隊が現れる。
未だに剣を持つ僕へと人を殺せる兵器の矛先は向けられた。
「ちょ待って下さい」
「対象包囲完了」
危険物を有した相手に対して正当な対応をする自衛隊員に敬意こそ払えど今回は俺は無実を主張し即刻銃口を下ろして欲しい。
だけど一言でも喋れば撃たれそうで怖く何も言い出せない。
「抵抗しないのが得策よ」
風を切る音。
彼女は空からロープを伝わずにふわりとまるで天女が天界から舞い降りたかの如き出来事が起こる。
目が合った彼女が言う。
自衛隊を押しのけ前に出る彼女は一体何者だろう?
「で、貴方一体何者?」
「そちらこそ先に名乗るべきでは」
赤いツインテールに少し陽光で焼けた肌。
戦闘用スーツを着た自衛隊員とは明らかに装いも異なる彼女が僕に問うた。
僕が答える間も与えず突然変身は解け隣に現れたヒノミが逆に質問をする。
沈黙の時間が訪れた……。
これはどっちの反応だ。
向こうの返答次第では僕の命はないかもしれない。ヒノミに文句の一つでも言いたいがそれはこの難局を乗り越えられたらの話。
「失礼、私は特務所属の
笑いかけ話す彼女。
その裏に見え隠れする真意を僕は推し量れなかった。
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