第58話 別途~彼の場合~
二人は2年3か月間の交際を終えて、別々の人生を歩み始めた。
彼はコースの試験に合格し、初級の資格を手に入れたのは夏が終わったころだった。自分の努力で得たものとは言え、彼女のおかげでもあった。彼女の助言や励ましがなければ、多分このまま彼は何もせず安定な生活に満足していて、自分磨きさえも考えないだろう。この分野に元々興味があるから、資格が取れたを機に次ぎは中級と高級コースをチャレンジしようと決めた。仕事面でも、どんどん充実しているし、前よりやりがいを感じてきた。
プライベートでも、変化が起きった。彼女と付き合っていたころ、あまりにも彼女との時間を優先したくて、そして彼女が彼と他の女性の関係に気に入らないこともあって、会社の仲間と遊ぶ時間は減っていた。フリーになった今、彼は積極的にいろんなアクティビティに参加した。だけど、異性と接する態度は以前より慎重になっていた。彼の変化を周りに気づかれ、まるで別人になったって面白がっていた。だけど、女性社員の間にまだまだ人気があるので、彼に好意を示す人は途絶えることがなかった。
でも、家に帰って一人になった時、彼はつい彼女のことを思い出してしまった。この家に彼女とのいろんな想い出がいっぱい詰まっていたから、どこに行っても彼女の匂いや姿がまだ残っていた。それで昔のことを想起させ、彼女のことを忘れたくても忘れれないだ。さすがにこうなったら前へ進めなくなると思って、彼は賃貸契約が切れてから他のところへ引っ越したいと思った。今からは新しい物件を探さないといけない。
彼女がロンドンへ行く前に送られてきたあの歌を何度も聴いていた。歌詞はあまりにも二人の心境にマッチしたから、時間がある時や彼女を思い出した時にあの歌をかけて、多い時に一日で何十回も再生した。でも、彼の生活は前みたいに忙しくなったにつれて、あの歌の再生回数も段々減ってきた。いつか、もしあの歌を聴く時、胸が苦しくならなかったら、彼女に対する思いが薄くなったという証拠になるでしょう。
だけど、彼女のことを多分一生忘れないだ。
年末になって、引っ越しの準備をしている最中、クロゼットにしまっていたあの箱を取り出した。別れた時に彼女から返したものと、彼女からもらったものを全部この箱にあった。一つ一つを見ながら、昔の記憶がよみがえた。でも、このすべてを捨てられず、新居に持っていくのも良くないと思って、やっぱり正月休みの時実家に置いて行くことにした。
帰省する前の前日、彼は一人で江の島の周辺に行った。一年前の旅行は、二人にとっての甘酸っぱい思い出だった。だから、今年の締めにちゃんとこの恋にさよならを言いたかった。一緒に回った店と観光スポット、一緒に泊まったホテル、一緒に夕日を見た海辺。今度こっちへ来る時、必ず笑顔でいられると信じていた。
新年早々、彼は初めて同僚が主催した合コンに参加した。別に新しい出会いを求めているではないが、ただの人数合わせだった。まあ、合コンとは言っても、皆は同じ会社の人で、ただ部署がバラバラ、初めて顔合わせた人も何人がいた。そこで、違う階で働く広報部の子と知り合って、楽しく話をした。
前の経験を踏まえて、さすがに今回は社内恋愛をしない方がいいかなと思ったが、彼は広報部の子とのことを現時点ではあまり深く考えたくなかった。もし交際関係に発展すれば、それでいい。ならなくても、それもいい。自然のなりゆきで行こうと思っただけ。
広報部の子は彼と同じ年ですが、彼より先にこの会社に入ってたので、一応先輩だった。二人は時々一緒に出掛けて、食事をしたり、たまにジョギングもした。住むところは同じ駅の周辺だから、一緒に帰ることも多くなった。
ある飲み会の帰りに、広報部の子が彼に告白した。どうやら、合コンの前に彼のことをすでに知っていて、それ以来共に時間を過ごしていたうちに、本気で好きになった。あまりにもストレートで堂々と告白されて、彼は驚いた。そして、初めて親友以外の人に彼女のことを打ち明けた。もちろん、彼女の正体を明かさないままで言った。今はまだ完全に彼女に対する気持ち整理できていなかったので、このまま交際したら、広報部の子にとって不公平だと思った。これは言い訳ではなかった。
そしたら、広報部の子はこう言った。
「いいよ、私は待ってる。あなたがいつか私を好きになってくれる日まで待ってる。だから、時間をかけて前の彼女に対する気持ちをちゃんと処理できたら、私に言ってね。」
そう言われると、彼は何も答えられなかった。
それからの5か月後、彼はようやく広報部の子に告白して、二人は晴れてカップルになった。
周りの目を気にせず、コソコソ隠れもしない。今度こそ、彼は正々堂々と社内恋愛をした。
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