第23話 不穏

自覚しながら行動する。これは二人で決めたことだ。


最初のころはとても良かった。不安と迷いがなくなるから、単なる恋愛を楽しんで、幸せな気分に包まれた二人は気楽に時を過ごした。


だけど、不穏な空気がだんだん迫ってきた。


彼は異性と距離を取り始めたことを周りが気づいた。前よりみんなの集まりを参加したくなり、参加してもなるべく異性が多数の方を避けていた。表に彼女がいないのに、どうしてこういう動きが取ったかみんなに怪しまれていた。それでも、彼はあまり説明しなくて、ただいろんな言い訳で誤魔化そうとした。彼は最初こういうことをして、何の苦労も感じていなかったが、最近はちょっと気持ちが変わるようになった。


元々社交的な彼にとって、友達と遊ばない、わざと冷たい態度で他人と接することはあまりにも自分の性に合わなかった。その上、みんなの誘いを断り続けることがどんどん難しくなり、彼もそろそろ前のように戻っても構わないだろうと思い始めた。自分さえ自覚を持って行動すれば、何の問題もないだろう。大体、彼女と毎日一緒にいられないから、内緒で行けば問題ないと思った。SNSでこういう集まり関連の投稿をしない、異性が映っている写真とかを隠せば、彼女は見つからないだろう。


一方、彼女はそれなりに頑張っていた。仕事の時間を前より彼との時間を意識しながら計画するようになり、残業を一週間三日マックスにしたし、デートにも前より積極的に取り組んでいた。だけど、こういうことをするようになってから、体力が追い付かない時は多々あり、精神的にも疲れとストレスがためるようになった。彼を失望させないために、どんなに大変でも、無理をしてデートに楽しんでいるように見せかけた。でも、そろそろ限界が来ていた。


やっぱり、自分を無理して変わろうとすることは難しいだ。いくら自分の意思で決めたことでも、人はそう簡単に変えられない。いつまで続けるだろう、二人はそう思うようになったが、お互いに自分の大変さを打ち明けられなかった。相手に素直になるって約束をしたのに、実践できることは至難の業だ。


ある日、彼女は会社の先輩と休憩時間にお茶を飲んでいた。その先輩も同じ大学に通っていたので、二人の付き合いは長かった。先輩は彼女に言ったことが、彼女を動揺させた。


「あなたはロンドンへの一時転勤にまだ興味があるの?」

「ええ?どうしていきなりそれを?」

「最近、上層部から聞いた話。もうすぐ、申し込みできるって。前からそれに興味があったでしょう?」

「まあ、あったね。でも、応募しても受かると限らないし。」

「今回なら、あなたにはチャンスがありと思うなあ。今まで、君の仕事での実績が注目されいたし、だから推薦したい上層部は何人もいた。あなたの上司だって、すごく力をいれてあなたのアピールをしたよ。」

「それはありがたい話ね。一応、考えてみるから、応募の件。」


彼女はもちろんロンドンへ行くことに興味がある、成功すればキャリアのステップアップも繋げるだろう。でも、この一時転勤は少なくとも6ヶ月の間彼と離れることになるから、彼の反応は多分よくないと思った。背中を押してくれることも到底考えられないだ。だから、彼女は決めた。どうせ受かるとは限らないし、やっぱり先に応募して、受かったら彼に言うつもりだ。仮に落ちたら、そのまま何もなかったのようにすればいいと思った。


一方、、彼は久しぶりに同僚との集まりに顔を出して、すごく楽しい時間を過ごした。もちろん、彼女に内緒で行ったことだから、SNSにその様子をアップするわけがない。もし彼女は新人後輩ちゃんも同じ集まりがいったことを知ったら、大変のことになるでしょう。でも、彼は自分が問題行為をしてない限り、こういう集まりに出席してもいいと自分に言い聞かせた。


二人は自分の思い込みで、取り返しのつかないことをしたとを知らず、この先にある激しい言い合いを予想もしなかった。

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