第22話 初心

一年の間、いろいろが変わった。


彼女は彼と待ち合わせした場所は初デートのカフェだった。あの時、彼女はウキウキしながらカフェへ向かったが、今回は足が重かった。前回は彼が先に到着して彼女を待っていたが、今回は彼女が待ち合わせ時間より40分も早く到着した。たまたまこうなったが、早く着くことは好都合かもしれなかった。彼女は自分の考えを改めて整理できたし、気持ちを落ち着かせることもできた。


今日はどうなるかわからなかった。でも、せめて自分が思っていたことをちゃんと言って、それからどんな結果が出ても、彼女は受け止めるつもりだった。


彼がカフェへ入った時、彼女はただ前を向いて何かを考えいたような顔だった。席に座って、飲み物を注文したから、彼から話しかけた。


「おとといのことについて話したかった。」

「電話が出ないのは自分の考えを整理したかった、別に避けたかったつもりで…」

「今日は来ないかなって心配していた。」

「逃げないように、面と向かって話したい。」

「この前、話し合いのつもりなのに、喧嘩で終わったは不本意だ。」

「感情が先に走らせたから、状況をコントロールできなかった。」


丁度その時、彼がオーダーしたものが届いた。お互いが自分の飲み物を口にした後、また話を再開した。


「私から言ってもいい?」

「どうぞ。」

「あの夜に見たことに対して、怒ったというより脱力感の方が多かったかもしれない。いくら私はああいうことが嫌いと言っても、あなたはまたそれをやって私に見せつけたことに失望した。だけど、責める気力はなかったから、ただその場で帰った。」

「ごめんなさい、俺の考えはとても甘かった。あういうことをやって、あなたを折れさせたかった。自分には非があるのに、そういうことをしてあなたを傷つけた。」

「私たちはどうしてこうなったかな?この店に来てから、ずっと思った。一年前の私たちを思い出して、今の私たちはまるで別人になった。もしかして私たちの愛情ってこんな脆いものなのかなと思った。」

「俺はあなたのことずっと愛している、それだけは信じてほしい。ただ、俺が不満を感じたことを一度もあなたに打ち明けなかった。ずっと我慢して、抑えきれなかったら一気に爆発した。」

「私もいろいろ考えた。あなたはありのままの私を受け止めたのに、私のわがままを許していたのに、逆に私はあなたの悩みと我慢を気づいてなかった。ごめんなさい、いままでこういうふうに自分勝手なことをした。」

「俺はあなたの考えを今更だけど、よくわかった。これから、俺はもっと自覚を持って行動する。あなたを不安させないように、異性との距離感をもっと意識しながら接する。そして、あなたを守るために、俺たちの関係を今までどおり、いや今まで以上徹底的に秘密にする。俺たちの恋は他人に見せつけるものじゃないから。だから、もう一度俺を信じて。」


こう言いながら、彼は彼女の手を握った。僅かながら、彼女は彼が震えていたことを気づいた。


「私も約束する。これから、もっとあなたの気持ちを重視するように行動する。あなたの思いやりと犠牲を当たり前のように思わないことにする。またもう一度、私たちが付き合い始めたころの初心に戻て、もっとお互いのことを考えてみよう。余計なことでこの関係を壊さないようにしよう。」


二人はようやく自分が思うことを相手に素直に話した。また決意をして、もう一度お互いの大切さを再認識した。


それからしばらくの間、二人は前より幸せな日々を送っていたが、先にもっと大きな試練が待っていたことを知らなかった。

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