第20話 彼の視点 その5
俺は何をしてしまったか?
家に帰ってようやく酒が抜け、自分がしたことの重大さを理解しはじめた。
俺は彼女に対してまだ怒っていた。向こうが折れることをどんなに待っていても、彼女からの連絡が来なく、俺のイライラが収まらなかった。それなのに、彼女は平気な顔でみんなとの食事会を参加していた。みんなと談笑した姿を見て、つい新人後輩ちゃんとあの食事会で彼女の前にイチャイチャした。
これはしちゃ一番いけなかったことだ。彼女が一番嫌がっていた行為を見せられたら、当然途中から席を外して帰ってしまった。
俺はどうして即座に彼女を引き留めなかったか?まあ、秘密交際の状況でどうやって声をかけるというんだ?どんな理由で引き留める?だからお酒のせいではなく、自分の意思で判断した。追いかけなくてもいいってこと。
でも、その場で追いかけも多分何もならないだろう。
俺の考えでは、彼女がそれで刺激されたら、俺の重要さを気付いてくれて、自分から非を認めて、俺たちの膠着状態が打開できるだろう。こんな考えは今更だけど、すごく幼稚で甘かった。俺だって責任があるのに、彼女だけを悪人扱いはすべきじゃなかった。彼女の性格をよく分かっていたのに、こういうやり方は一番いけなかった。
彼女は傷づいた時、他人に自分の苦しみを打ち明けない、自分で抱え込め悩むタイプだ。自分がどんなに苦しくても、苦しみを与えくれた人に何も言わず、ただ振り向かず静かなにその人の傍から去っていく。二度とその人と関わらないことは、彼女が自分の心を守る手段だ。
だから、俺に一度も自分が受けた誹謗中傷を打ち明けなかった。彼女の言う通りだ、俺に言っても何もできなかった。
翌日の朝は土曜日で、昼過ぎのころ彼女に電話を何度もかけていたが出なかった。やっぱり、俺と話したくないだろう。それでも、俺はメールを送って、明日の昼に会いたいと言って、返事を待っていた。
会いたいと言っても、俺の中には解決策がまだ見つからなかった。でも、この前のように感情が先に走らせ、状況をされに悪化することだけは避けたい。俺なりにできることは二つがあった。
まず、異性との距離をできるだけを取ること。彼女を失うことが耐えられないから、周りがどう思われてもかまわない。自分にとって一番大切な人は彼女しかいなかったと改めて気づいた。
それと彼女の仕事に口を出さないことだ。元々、彼女の仕事ができる姿に惚れたのに、どうして交際後にそれが欠点になっただろう?多分、俺は彼女の仕事に嫉妬していた。彼女は自分の精力と時間を仕事に捧げたことに対して面白くないと思った、だから彼女の仕事ぶりと態度をあんなふうに非難した。
もう手遅れにならなかったらいいと思うけど。
この日の深夜、彼女からの返事が返ってきた。「分かった、会いましょう。」って。
まあ、面会拒否されるより、この素っ気ない返事の方はいいかも。
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