第19話 挑発
あの夜の喧嘩で、状況がさるに悪化してしまった。
そのつもりはなかったけど、話し合いは喧嘩になり、二人がつい自分の本音をお互いにぶつけてしまった。
強いと言えば、この喧嘩から生まれた唯一の良いことは、お互いは初めてこの関係に秘めた問題点を知ることだろう。
彼にとって一番驚いたことは、彼女が自分の異性関係に対してここまで不安と不満があったことだ。彼女の言う通り、彼にはこういうことが問題があるって一度も思わなかった。だって、彼はいつも誰にでも優しく接していた、男女問わず同じ態度を取っていた。だけど、彼女の言葉から初めて気づいた、こういう態度が異性に勘違いされやすいかもしれなかった。
彼女の場合では、彼がここまで秘密交際のことを納得できなかったことを初めて知った。確かに、彼は秘密交際の件について度々文句を言ったけど、まさか自分の仕事のためにやったことだと誤解された。その上、彼は自分の仕事ぶりにこんなに不満だって想像もしなかった。
問題の原因が分かっていても、すぐに状況が改善できるわけでもなかった。そもそも、自分の性格、物事に対する態度とやり方ってそんなに変えるものじゃない。自分が納得できない限り、自分から変わろうとしない限り、変化も長く続かないでしょう。彼はすぐに異性との関わりすべて断つことができない。彼女だって彼のために仕事のペースと時間を変えることもできない。
膠着状態が続く中、思わぬ事件が起きてしまった。
会社に新入社員数人が入ってきて、その中に一人の女性が彼の部署に配属された。その子はすごくかわいいし、愛想もよく、すぐに男性社員の注目を集めた。彼はこの後輩の教育係になったので、一緒に過ごすことが他のチームメンバーより多くなっていた。
他の同僚たちにも紹介しようと思って、ある晩ご飯の集まりに新人後輩ちゃんを連れていくことになった。だけど、彼は彼女が同席したことを事前に知らなかった。二人が会った時は気まずくそうな顔をしても、軽く挨拶したぐらいできて、それ以上を何も話さなかった。集まりの人数は結構あったので、彼は新人後輩ちゃんとテーブルの真ん中に座っていたが、彼女は反対側の端に座った。
新人後輩ちゃんは積極的に彼にアプローチをした。話をしていた時はさり気なく彼をほめて、みんなにも彼のいいところばかりを言って、食事をした際でも気が利くて、彼のために料理と飲み物を取ってきてくれた。彼はいつもこういうのを他の人のためにやったことなので、された側の気分はこれほどよかったって初めて気づいた。さすがにここまでこんなかわいい子に良くしてまらったら、彼は明らかに機嫌が良くなり、ついお酒をいつもより飲んでいた。
この楽しいそうな様子を遠く離れた彼女は静かに見ていた。彼は、自分が一番嫌がっていた行為をわざとやっていたかな?そうは信じたくなかったけど、これってまるで自分に見せつけるように、仕返しされたように。彼女は息が苦しくなってきた。
決定的な瞬間が来てしまった。
新人後輩ちゃんは彼に自分のデザートを食べてみてほしいと言って、自分のスプーンにそれを載せて、彼に差し上げった。彼は思わず自然の流れでそのままそれを口にした。新人後輩ちゃんはそれを見て、とても満足気に彼を見つめて、感想を求めた。彼も満面の笑みで新人後輩ちゃんに答えた。
ラブラブな雰囲気に包まれた二人に、みんなが騒いでいた。
彼女はもうこれ以上が耐えられなくて、となりにいた同僚に自分が先に帰ることを告げた。席を立って店を出ていた彼女を見たが、彼は結局何もしなかった。
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