第15話 ひび
交際一周年記念日、そして彼の誕生日でもあった。
その日は平日なので、誕生日祝いをその前の週末にした。彼は一緒に旅行に行きたいと言ったから、彼女はある秘境にある高級温泉旅館を予約した。そこなら、人目を気にせず、観光地より誰かにバッタリ会う可能性も低いだろう。
旅館の施設や周りの自然を満喫した一日だった。夜、晩ご飯も済ませ、温泉も入ったし、二人は部屋で話をしていた時、彼女の携帯は鳴った。どうやら会社の先輩からの緊急連絡だそうで、彼女は部屋を出て電話をした。中々部屋に帰ってこないので、彼は仕方なくテレビを見ながら彼女の帰りを待っていた。およそ20分後、彼女がようやく帰ってきた時、彼は不機嫌な顔で話した。
「週末ぐらい仕事の電話を出ない方がいいでしょう。しかも今は旅行中。」
「仕方ないでしょう、来週は大事な会議があるから、確認しないといけないことがあって。そうしないと、次へ進まないし。」
「そうだったとしても、電話の時間は長すぎ。こんな時間にかけてくるなんて非常識。」
「そう怒らなくてもいいじゃない。せっかくの誕生日と記念日だから。」
「前から言いたくてさ、最近仕事をする時間は前より多くない?平日の夜にも残業のせいで中々デートできないし、週末でもあなたの習い事とかで一緒にいられない。俺はあなたにとってそんなに重要とは思えない。」
彼女は深くため息をついた。
「最近は確かに前より忙しくなったということは認める。でもこれは一時的なことだって言ったじゃない。このプロジェクトが終わったら、残業もしなくなる。それに、習い事の件も前から知ってたでしょう?何で今更文句を言うの?」
「あなたとの時間が前より少なくなった、それでも我慢しろというの?」
「しばらくのことだから、すこしぐらいはいいでしょう?私の立場をすこし理解してほしい。大体、恋人とはいえ、毎日くっついてイチャイチャするってありえないでしょう。個人のスペースと時間が重要だって前に言ったじゃない。」
「そんなに一人にいたいなら、恋人はいらないでしょう?相手の気持ちも気にせず、自分がやりたいことやり放題って問題ないとでも言いたいわけ?」
「私がこの関係の中に何の努力もせずってこと?あなたの気持ちを無視したと言うの?そう思われている私はバカかもね。頑張って早く仕事を終わらせ、時間を作ってあなたとここに来て、誕生日と記念日のお祝いのために睡眠時間も削っていろんな準備をしたのに?」
「あなたみたいに大事なお仕事をしていないから、邪魔をして悪かったね。じゃあ、仕事に戻ればいいでしょう、俺なんかを構ってないで結構。」
この嫌味たっぷりの言葉を聞いた彼女はつい切れた。無言で自分の服に着替えて、荷物をまとめ始めた。これを見て、さすがに彼も自分が言い過ぎったことを気づいた、でも今はまだ怒りが収まらなかったので、どうしても謝りたくなかった。彼女は部屋を出ようとする時、彼にこう話した。
「こんなわがまでま自分勝手の仕事女と付き合って、本当大変だったわね。あなたの周りにはたくさんの優しい、かわいい、そしてあなたの言うことをちゃんと聞く子がたくさんいるから、その中から理想な彼女さんを探してもいい。失礼いたしました。」
彼女が出た後、彼はしばらくどう反応すべきかわからなかった。本当に最悪の誕生日と記念日だった。
それにしても、どうしてそこで他の女の話が出たか、さっぱりわからなかった。だって、彼の心にいたのは彼女だけ。
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