第13話 彼女の視点 その3
「晴れて付き合うことになりました」
自分の口からこんなセリフを言えないよ。昔も今も、そしてこの先もありえない話だ。
だけど、彼は私たちの関係を周りに知ってもらいたいつもりだった。自分の幸せを他人に分かち合いたいなのか、それともただ恋人ができたことを自慢したいだけなのか、こっちとしては理解できない行動だった。
彼の考え方は、別に禁断や背徳的な関係でもないのに、公表してもまったく問題ないということ。しかし、ややこしいのは「社内恋愛」だ。
この一年間、彼は相変わらず周りに優しく接していて、気配り上手という振る舞いのおかげで、女子の間では高い人気を維持したままだ。もちろん、私たちの関係が公になっていないから、彼が今まで通りに異性と接していることは全く問題ない、むしろそれが激変していたら逆に怪しまれる。
しかし、それは私の不安の種になった。
彼の気持ちに対してむろん疑問はなかった。ただ、私の気持ちを気にせず、彼が相変わらず異性となれなれしく接していることが気に入らなかった。告白された場面や積極的に彼にアピールする女性の媚びる姿を見る度に、私の機嫌が自然と悪くなった。彼にこんなことを続けると、誤解されやすいからやめるべきだと何度も話したが、彼はそれが問題行為という自覚と認識すらなかった。だから、私の気持ちを無視したまま、何ごともなく女子に優しくする行動を続けた。
そんなふうに優しくされたら、向こうが彼を好きになるのは当たり前だろう。
何度も同じことを話しても、まったく聞き耳を持たず、段々自分がみじめだなという気持ちが湧いて来た。プライドとして一番許せないのは、男のために自分に嫉妬する姿だった。彼に相手されない苛立ちと、器が小さい女に見える屈辱感の間に行ったり来たりする毎日だった。散々悩んだ末に、この結論にたどり着いた。
彼が自分から問題を認識しない限り、私たちの関係は張りつめたままだろう。
前の彼だって同じような問題があった。女子に人気の上、平気で同じ職場の人妻と二人きりで晩ご飯を食べに行ったり、遅くまで酒を飲んだり、車の中で長時間話をしたことが何度もあった。異性との距離感をうまく保てない男はやっぱり女を不安させる。
問い詰めたら、彼はこう言った:
「俺はちゃんと一線を越えないから、あなたが余計なことを心配するな。大体さ、俺の交友関係に口を出さないべきだろう、まだ結婚でもしてないのに」
だから、またこういうタイプのモテモテ男と付き合いたくなかった。
また同じ過ちをしたくない。こういうことで喧嘩したら、おしまいだ。
もちろん、この一年間は幸せな時もあった。あの問題さえなければ、彼は彼氏としては文句を言えないぐらい完璧だ。いつも私の体調の変化を気にかけて、体にいいもの買ってくれて食べさせて、気分が悪いときに心配してくれて、元気になるためにいろんなことをしてくれるし。何よりも、私のことをありのままに受け止めてくれた。
だからこの関係を簡単に終わらせたくなかった。
自分の中では、私たちは将来がないかもしれないと薄々感じていただろう。だから、私はこれほど公表したくなかった理由がここにあったかもしれない。彼の女子ファンを恐れているのが一因だけど、根本的な理由は私が彼を完全に信じていなかったからだ。私は過去のトラウマを克服していない。その上、彼は自分の無神経な行動から生まれた影響に気づいていないから、私は彼に対する不信が段々強くなっていた。
私たちの間のずれがどんどん大きくなって、分かり合える日がくるかな?
幸せって、こんなに脆くて壊れやすいものだね。このことに気づく時がもうすぐ来るってまだ知らなかった。
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