第5話 距離

あの日以来、二人の関係はちょっと変わった気がした。


会社で会った時、挨拶を交わし始め、世間話もするようになった。


彼はそれだけでは物足りないと感じていて、二人の距離をさらに縮めたいので、なんとかしようと思った。だが、彼女は彼の積極的な行動に警戒心を持って、二人きりになるのを避けていた。面と向かってのチャンスがないなら、彼は彼女のSNSで存在感をアピールしようとした。彼女が新しい投稿をした時、彼はほぼすぐにいいねを押してくれて、褒め言葉のコメントも残してくれた。しかし、彼女はそういうことに無反応のまま、まるで見てなかったようにスルーした。


実際のところ、彼女は彼からの好意を感じていた。それでも、彼女は彼の気持ちを応えるつもりはなかった。彼女は元々恋愛に対して悲観的な姿勢だったから、それに今は仕事に集中したい一心で、社内恋愛が面倒くさいとしか思わなかった。今のうちに、彼は自分に対する気持ちはそこまで深くならないはずなので、自分から二人は恋人になる可能性をなかったことにしたら、彼は自然に諦めるだろうと思った。


進展がないまま1か月ぐらいが過ぎ、また同僚たちと映画を見に行くことになった。


だが、前回の楽しい雰囲気と違って、彼女は彼に対してとても冷たかった。彼が彼女の近くに移動しようとした時、彼女はさりげなく彼を避けて、他の同僚のところへ移った。数人で話をしていた時も、彼女は彼の質問に答えもせず、まるで聞こえなかったふりをした。食事をした時も、彼は彼女のために食べ物を取りたいと思ったが、彼女はそれを拒否した。そして、同じ電車で帰るはずだったのに、彼女はわざと彼が注意していない隙を狙って、こっそりと違う駅へ行こうとした。


つい我慢出来なかった彼は、彼女を追いかけて、やっと駅のホームで彼女と会えた。彼が現れた時、彼女は結構驚いたが、それでも冷静な表情を見せた。


「何でここの駅を利用したの?近くに別の駅があるじゃない?」

「別に理由なんかないですから。ただの気分転換」

「今夜はおかしいよ、あなたは俺をずっと避けてきたから。俺は何をしたのか?前はあんなに楽しく話したけど、最近は明らかに態度が変わった」

「別に変わっていない、これがいつもの私です。無愛想ってよく言われますから、気にならなくていい」

「それは違うだろう。いつもの君じゃないから。本当の理由を教えてくれる?」

「…あの…これって迷惑なんです」

「どういうこと?」

「私たちはただの同僚で、だからあまりにも馴れ馴れしい態度で私と接していたら、こっちの迷惑になるんです。だから、それは止めていただきたいです。そして、もしこの前のやり取りであなたに何かの誤解を与えたら、ここで謝ります。すみませんでした」


こんな言葉を聞いて、彼はこれ以上何も話さなかった。丁度その時、電車は到着していたので、彼女は素早く列車に入り、彼はただ離れていく電車を見送ることしかできなかった。


彼女の言葉から初めて分かった。自分が一方的に彼女を好きになり、そして積極的に彼女に接近しようとした行動は、あまりにも馬鹿馬鹿しいなと気づいた。

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