第4話 彼女の視点 その1

彼のことをいつ意識し始めたでしょう?


会社に入ったばかりだから、大きなプロジェクトを任され、あまりにも忙しくて周りを見る余裕はなかった。


前の会社にいた同僚Aさんが、たまたま今の会社にも入っていた。違うチームに所属したけど、忙しくない日に限ってお昼を一緒に食べるようになった。ある日、Aさんが彼のことを私に初めて話した。


「最近入った新人の中に、OOさんのこと知ってる?」

「知らないよ。誰なの?」

「この前の新人プレゼンテーションやったよね?彼もいたはずじゃない?」

「残念ながら、今だに新人たちと一対一で話したことはないね。それに、みんなは私と違うチームだし、ますますそういう機会がなくて。どうしてわざわざその人のことを聞くの?有名人でもないのに?」

「最近、若手独身女性社員に注目されているのに、知らないなんて。あなたは本当に仕事以外のことは何も見てないね」

「どうして注目されているの?イケメンか?それとも他のなにか?まさか既婚者のあんたまで…」

「私は旦那以外の人は見ないから。ただ、外野で女の子たちは彼の周りに集まるという現象を見るのがとても面白くてね…」

「注目されていることを楽しむような男なんだ…」

「そうじゃないから、逆に人気が出る。みんなにすごく優しく接しているし、顔もそこそこいい、スタイルも悪くない」

「そういうところはダメだよ。他の異性に優しいというのは、本命にとって残酷ということじゃない?本命を特別扱いはしない上、他の女とイチャイチャするところを見せられたらあまりにもひどい。ちゃんと異性と適当な距離を取らないといけないよ。それは男でも女でもすべきことでしょう?」

「何でむきになったの?まさか彼に気があるじゃないよね?」

「冗談をやめてよ、知らない人だし。それに、こういうところを知られた以上、私的にはアウトだから」

「ええ、ここだけが譲れないだね」

「そうですね、こういう人と付き合ってたら、考えるだけで疲れる」


あの時の会話以来、彼のことを何となく観察し始めた。確かに、彼の周りにいつも女性の同僚がいた。確かに、外見はそこそこいい。確かに、人との接し方はうまかったから、男女問わず仲良くなれた。でも、女に囲まれているところを見るのは気に入らなかった。その時、すでに嫉妬していたかもしれない。別に彼のことを好きでもないのに、気軽に彼にアプローチした女たちに嫉妬していたのかも。


久々に話題の映画を一人で見に行くつもりだった。ちょうどAさんが誘ってくれたから、みんなで見に行こうと決めた。まさか、彼も一緒に行くなんて、正直訳が分からないけど一瞬焦った。まさか、みんなの前で彼は自己紹介をするって、握手までされて。内心が動揺したことを必死に隠し、わざと彼に近づけないように距離をとった。


結局、夕食の時に“捕まれた”。


目の前に座っていたら、無視するわけにも行かなかった。でも、話しているうちに、どんどんこの人のことを知り、興味が湧いてきた。帰り道の電車での時間もあっという間だった。別れを惜しみながら、おやすみなさいと言った。


その夜、SNS上で繋がった。


この時点で、ただいい友達ができたという感覚だった。私たちの関係が思いもよらぬ方向へ変わることを、今の時点ではまだ予想していなかった。

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