第3話 彼の視点 その1
彼女はなぜか輝いて見えた。
外見は別に俺のタイプでもないけど。今まで好きになった人の共通点と言えば、小柄で可愛い系の女性だった。
彼女の身長は一般女性より高く、スリムとも言えない筋肉がある方で、肌色も白いとも言えない。可愛いというより、カッコイイでスポーティー系の方が合っていた。
会社に入ってすぐ、新人研修会で彼女は自分のチームの代表として俺らにプレゼンテーションをした。それは俺たちの初対面だけど、たぶん彼女は俺のことを覚えていなかっただろう。でも、彼女の自信満々の振る舞いはとても印象的で、星がキラキラ輝くように忘れられなかった。
後で知ったけど、彼女は俺よりわずか一か月先に入社したって、あれほどできる人だなと感心した。それで彼女にますます興味が湧いてきた。
でも、俺らは仕事上であまり接点がなかった。もちろん、プライベートで話をすることもなかった。オフィスでお互いのチームの位置は隣にあったので、彼女を毎日見られることだけでもラッキーだと思った。
彼女はその後管理職に抜擢された。入社わずか6か月の快挙なので、一気に話題の人になった。だが、彼女のプライベートは謎に包まれたまま、知りたくても何もできなかった。あまり仕事場で自分のことを話さない主義みたいだって。幸い、彼女をよく知る同僚たちと友達になり、時々彼女のことをさりげなく話をしているうちに、彼女の情報をこっそりと手に入れた。
転機が訪れたのは偶然だった。
丁度、みんなで話題作の映画を見に行こうという約束があった。でも、彼女は一度も俺たちの集まりに参加したことがなかった。その日、たまたまうちのグループ内の一人が彼女を誘い、珍しく彼女もその夕方に仕事の予定がなく、たまたまその映画にも興味があって、だから一緒に映画を見に行くことになった。
みんなが会社のロビーで集まった時、彼女を見かけたときの気持ち、いまでも覚えている。ドキドキで飛び上がるぐらいの興奮で、俺は勇気を出して自分から彼女に自己紹介をした。突然声をかけられたので、彼女は一瞬驚いたように見えた。
その後また話をする機会がなく、どうしょうと思ったとき、映画鑑賞後の食事会でわざと彼女の前に座って、必死に話を持ち掛けた。いろいろな話をして、とても楽しい時間だなと思った。
帰り道の電車は同じ方向なので、二人きりになっても会話は途絶えることはなく続いた。残念なことに、俺の方が先に降りた。
一瞬考えたけど、彼女と離れたくなかったので、家まで送りたいと思った。でも、そうすると、彼女はドン引きするだろう。やっぱり、急がないほうがいい、慎重に進みましょう。
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