幕間 コンビニ
時刻は昼、学生や社会人などはそれぞれの居場所に居て街中には夕飯の買い物を行う主婦ぐらいしか出歩いていない。それでも人数が多くないので、この男はよく目立つ。
白いスーツに下に青いアロハシャツを着こみ、赤いネクタイを付けている。ズボンも上同様に白いズボンに茶色い革靴を履いている。両手には黒い指ぬきグローブをはめている。格好に似合わずその顔は典型的な日本人顔で割かし濃い口髭を生やしていて短い黒髪がよく目立つ。
「ふ~ン、ふふ~ン♪」
機嫌良さそうに鼻歌を奏でているこの男の名前は
明かな怪しい姿でこんな奇行をしているため、余裕で不審者案件なんだが、当の本人はそのことをさして気にしていない模様。
彼が何故、機嫌が良いのかと言うと原石とも呼べる程の少年をうまい具合に勧誘できたからだ。
このために念密な準備をしたのだ、出来ませんでしたなんて言えば一切手伝っていない天狗に怒られてしまう。
少し小腹が空いたらしく、ホテルに戻る前にコンビニで弁当を買うことにした。
現在居る場所から一番近い場所を携帯で探していみるとちょうど徒歩五分ぐらいの場所に一軒あった。
道案内をセットしてそこを目指した。
そのコンビニは割かし広い面積で駐車場も完備している。この時間帯は、車も止まっておらず多分客は一人もいないのだろう。
「いらっしゃいませ!」
「いらっしゃいませ♪」
店内に入るとパートさんと思われる奥様方が御挨拶してくれた。
チルドケースの弁当売り場に真っ直ぐ向かい、手ごろな弁当を手に取った。
「これでいいかな」
そのままレジまで持って行き、パートさんに渡した。
「お客様、レジ袋いかがですか?」
「あ、お願いします。それと、温めも」
「かしこまりました」
そのままてきぱきと弁当をレンジに入れ、スイッチを押した。
お金を用意している間に、袋を取り出し両手で空間を作る。
温め終了まで残り三十秒ほど。
料金は四百円ぐらいなので財布からワンコインをパートさんに渡して、いくつかのお釣りを受け取った。
そんな時、
「強盗だッ!金を寄越しやがれ」
目出し帽を被った二人組が真昼間に店内にナイフを持って入ったきた。前方の男は手にナイフを持っていて、後方の男はリーダーのように冷静に店内を見まわしている。そんな時、影村寿雄は手が蒸れてきたので指ぬきグローブを脱いだ。
「あっ、すいません。箸もお願いします」
どうでも良いので、右手の手首を腰に当てながら、左手で貰うのを忘れていた箸を要求した。
「おい!そこのおっさんもだ。持ち金、全部寄越せ」
前方の男が影村の方まで、怒鳴りかけてきた。
パートさん二人は動揺している。
ピーピピィーっとレンジが鳴った。どうやら温めが終わったようだ。
その瞬間、影村の瞳が瞬きした。
「お、おい、妙な真似はすんじゃねぇぞ!」
ずっと後ろにベガ立ちしてたリーダーと思われる男が、急にビクビクしながら声を出した。
「あっ、レシートここで良いですか?」
貰ったレシートを専用の小ダストボックスに入れた。
「お、おい!」
男の脚が生まれたての小鹿のようにプルプルし始めた。
「リーダー、おちつ・・・・」
ナイフを持った男が後ろの男をなだめる為に振り向いた。
その隙に影村は左手でナイフの男の頭を掴んだ。すぐさま手を放すが、男はその場で嘔吐しながら崩れ落ちた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
その姿を目撃したリーダー格に向け、そのまま左掌を見せた。
瞳が男を見つめていた。
「ァァ嗚呼あああ!」
そのまま、立ちながら気絶した。
「店員さん、お弁当下さい」
影村はそのままレジに戻り、商品を絶句したままのパートさんから受け取って退店した。
店を出る直前、左掌の瞳が二人の店員の方に瞬きした。
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