第4話 馬飼琉助 part1
自分こと、
理由はシンプルです。これ以上は迷惑をかけたくない。それだけだです。転校という手段もありましたが、それでは癌を転移させるだけであると考え、解決には繋がらないと思い、そう決断させて貰いましたマル。
丁寧な言葉の文章は嫌いなんだよな。だが、コレは、やめる際に教頭から書けと強制されたので仕方なく書きました。最初はムカついて文庫本一冊分の量の文字数を書いてやろうとしたら、普通にキツくて止めた。だから、現代文の教諭の花棚先生に添削して貰いながら先の文章を書き上げた。なんで、俺辞めるのに卒業論文擬きを書かんといかんの?
あの日以来、家には毎日のようにマスコミがやってきて事件について聞かれる。ネットでは、自分が乗客を皆殺しにして、鬼がやったとか言ってるなどと誹謗中傷を書かれ、挙げ句の果てにはニュースに映った映像から家まで特定された。
マスコミの正式名称知ってる?マスコミニュケーションだよ。コミュニケーションの意味、辞書で調べてみろよ、マジで。
今日も何もする気が起きず、窓から外を眺めていた。すると、玄関から知ってる顔が勝手に入って来た。
「鍵開いてるから入るぞー。いいな」
彼の名前は
背丈は174㎝ある俺より少し背の高い178㎝。彼の顔は非常に整っておりニキビ一つとてない。髪の毛は茶髪で地毛とは思えない程の濃さで短く切りそろえている。
彼が来た理由は、俺の乱れた食生活を正すために食事管理を俺が頼んだからだ。受験勉強が忙しいというのに快く引き受けてくれた。心優し男。さぞかし女性におモテになるのだろう。
「聞いたぞ。せっかく受かったのに辞めたんだってな、学校。勿体無いなー、俺なんか、浪人生なのに」
「いや俺以外の生徒や先生たちに迷惑を掛けるわけはいかないだろ」
「迷惑って言うのはもう遅いんじゃね?こんなスレ立ってるし」
琉助が自前の携帯を見せてきた。
そこには以前俺が教頭から見せられた某掲示板のスクリーンショットであった。
「いやいい。見たくない」
内容を見まいと手でその画面を覆った。
これ以上、この件に関わったら罪悪感に押しつぶされそうになる。
「まぁ、良いじゃん。まだ実害出てないんだから。そいや、今朝ポスト見たら封筒入ってたぞ。ほれ」
つか、何勝手に人の家のポスト漁ってんの?まぁ良いか。コイツの事だし悪さしないだろ。
「差出人不明?何だこれ?」
「さぁーね。俺には分からないや。開けてみたら」
封筒を開けると中には剥き出しのカッターの刃がそれはもう沢山入っていた。お金の無駄とはまさにこの事。
「うわぁ!?」
殺意マックスじゃん。
俺こんなに嫌われる事したっけ?
「おい、マジかよ。えげつねえなぁ」
琉助はそう言いながら携帯で俺の事を撮影していた。その顔は完全に野次馬のそれだ。
「てか、何で動画撮ってるんだよ」
「え?だってリアクションを保存したかったから」
ふざけた口調で言う琉助に対し疑問を投げかける。
「まさか、これお前が用意したんだじゃねえよな?」
そんなことは無いと分かっていても、念のためということで。
「それは絶対にない。信じてくれ」
先程のあっけらかんとした態度からは想像も出来ないような真面目な目つきで言われた。
「分かったよ。お前の事だし信用する。」
そうしてこの話題は終わった。
パン!と琉助が手を叩くと、彼は立ち上がりキッチンへ向かった。
「よし!気分転換だ。美味いもん食おうぜ」
朝食として、出されたのはベーコンエッグとレタスとトマトのサラダ、そしてインスタントのオニオンスープだ。
「よし!料理終了。早く、早く食おうぜ♪いただきまーす」
「いただきます」
ベーコンエッグを丁寧にナイフで切り、口に運んだ。口の中にベーコンの油とそれに絡んだ卵の
そうして十分もしないうちに、料理を完食した。
「ご馳走様でした」
「ご馳走様でした」
2人ほぼ同時に完食した。
琉助は何やら携帯をいじっているようで不意に話しかけてきた。
「テレビ点けて良いか?朝のニュースが見たいんだけど」
「ああ、別に構わないぜ」
テレビでは連日のようにあの日の事を取り上げている。当事者の俺が言うのは何だが他に無いのだろうか?
テレビに昨日出会った女性の記者さんがモザイクなしで見覚えのある場所が映っていた。
『今日は生存者である山門健さんの学校に取材に来ました。さっそく登校中の生徒さんに聞いてみましょう』
気分が悪くなったので俺は琉助に無言の圧を送り半強制的に番組を替えさせた。
「やべェ。もうネットで炎上し始めてんじゃん!」
「妥当だな」
その後は幾つか琉助に勉強を教えて一時解散になった。
「ほんじゃ、また昼な。俺も家で勉強するから、何かあったらまた連絡してくれよな」
「ありがと。また後でな」
琉助が帰ったあと、数分後ピンポンが鳴った。カメラを確認すると、小太りな中年男性が映っていた。
手にはペンと手帳を持っていて首にはカメラをぶら下げているので一目で記者であると分かる。
「すいません。山門様のお宅で間違い無いでしょうか?私、フリーの
「すいません。今はそういう気分じゃないので」
様々な記者が代る代る毎日やってくるのでその度に相手にすることが非常に面倒くさい。
インターホン越しにそう返事をするも記者は、引き下がる気もないようだ。
「ほんのちょっとで良いんです。私、東京からわざわざ来たので、少しぐらいは質問させていただきたいんですが」
断られたことで少し焦った様子で、早口になった。
先程フリーの記者と言っていたので、俺に断られれば明日の食事も大変なのかもしれない。
「どこから来たかは、関係ないです。本当に今はそういう事を話したくないんです」
「本当にちょっとで良いんで、お願いします」
そろそろうざくなってきた。
こういう時の対処法は心得ている。
「帰ってください。警察呼びますよ」
そう強く言い放ち、通話を遮断した。
二、三分ぐらい経ったあと、再びインターホンが鳴った。
「しつこいですよ。本気で警察呼びますよ」
そう言って通話を遮断しようとしたが、さっきの声とは全く異なる声が聞こえた。
「ワシ、そんなにしつこかった?まだ一回目のはずなんだけど」
さっきとは全然声質が違った。陽気で少し高めの声だ。
「貴方は誰です?」
カメラを覗くと怪しげな口髭を生やしたおっさんが映っている。
「ワシは
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