第2話 山門健 part2
学校までの道のりは最適化してあるため、ほぼ一直線で辿り着くようになっている。
それでも四十分ぐらいはかかるため、割とキツイ。
中学時代は一緒に登下校する友人が居たが、今は受験勉強に励んでいると信じているのでボッチ登校を甘んじて受け入れている。俺が卒業した後は奴が一年間ボッチで励んでくれるだろう。
校門の前にはやはり沢山の記者さん達が集まって、校門をくぐろうとする生徒に妨害のような強引な取材を行っていた。
「あっ、山門健さんです!」
マイクを持った女性の記者と大きなカメラや音響、照明など様々な道具を持った撮影団が駆け寄ってきた。
「あの新学期ですが、今の気分はいかかですか?」
俺は自転車から降りてこう答えた。別にこの質問自体は大したことのないものだ。一々気に留めておく事もない。だが、明らかに校門の前で陣取っていて他の生徒にとってはいい迷惑だ。
「不快です。あなた達の行いはマスメディアとして最低です」
鋭い眼で記者団の方を睨みつける。ここで一つ言っておく、俺もまだ若い、これは若気の至りってことで忘れて欲しい。後々でニュースを見ると恥ずかしくて悶絶しそうになった。きゃー。
ちなみに、こんだけイキった発言をしたが俺の膝はちょっと震えている。よくよく考えずとも、大の大人に集団で囲まれる事は高校生になっても恐怖だ。
空気がピりついてきた頃に、生徒指導の先生たちがやって来て、記者たちと何やら話し始めた。
流石にジャージを着た威圧的な教師陣に気おされて、どんどん記者団がしり込みし始めた。
そんな中、教師の一人がこちらの方を向いてこう言った。
「君は先に教室に行きなさい」
「は、はい」
少し動揺しながら俺は駐輪場へと向かった。
駐輪場に居る他の生徒からの視線がキツイ。しょうがないので気にせず定位置に自転車を止めて校舎へ向かった。
道中、誰も口にはしないが皆、『お前、なんで来てんだよ』と言わんばかりの顔でこちらを見てくる。
ここも気にしても無駄だと判断し、俺は駆け足で教室に向かった。
一学年の教室は学校の一番上のフロアに位置しており。更に言えば俺の教室は学年室の隣にあり、俺はそこを目指した。
下駄箱で外履きから上履きに履き替えて、教室に向かった。
教室の前まで来ると新学期特有の夏休み何したトークが花咲かせていた。
思い出を話す程の間柄なら、夏休みなんて一緒に遊んいでるはずだから語る思い出などあるのだろうか?
ガラガラっと教室の後ろ扉から入ると、急に静かになった。あれ、お通夜かな?
「おはよう」
とりあえず挨拶してみた。
「お、おはよう」
普段から仲良くしているクラスメイトが、気まずそうに返事をしてくれた。
えーっと、彼の名前は何だっけか?会話はあるけどお互いの名前は知らないっていう関係。そもそも、話すようになったのも、初めの席は出席番号でたまたま席が前後関係だったからだ。えっ、薄情だって?俺もそう思う、でも名前がどうしても思い出せないんだもの、しょうがないね。
その後、何故か不気味な空気間の中で始業式を行うために体育館へと列を組んで向かう事になった。
一学年は先に入場して上級生を待つということが基本だ。もちろん私語厳禁。
校長先生のありがたくも長ったらしい演説を全校生徒が立ちながら一斉に聞いている。その雰囲気は静と形容出来る程に静かだ。だが、それは眠気からくる静けさではなく、気まずさによるものかだと思う。しかし、ずっと立っているのは辛いモノだ。毎回思うことなのだ『式』って言うぐらいならパイプ椅子ぐらい用意して欲しいものだ。どうせ卒業生からは余るほど貰っているはずだからな。準備は、まぁその辺の生徒会のお偉いさんに任せて。
その後約三十分程で式が終わり各々の教室で解散となった。
俺も帰ろうと思い帰り支度をしていると担任の
彼女は長すぎず短すぎずの茶髪を後ろでヘアゴムを使って縛っていて、度の低い眼鏡をつけており、右眼の下の方に小さなホクロがある。普段は物凄くラフな格好で登壇に立っている。しかし、今日は始業式のため黒いスーツでビシッとしている。
「山門くん今ちょっと時間良いかな?」
「別に大丈夫ですよ」
そう言って席を立ち、彼女の二歩後ろを付いていった。
そして着いた場所は校長室だった。扉の前にはうちのクラスの副担任である
「ここに入ってくれ」
彼がそう言うと校長室の重たい扉が開かれた。
今日二回目の、嫌な予感がする。
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