第4話

 武蔵野フェスには、美咲を連れて行ったわ。


 病室で、二人で撮った写真だけど。


「里菜。フェスまで、ひと月ね。どんな格好していく?」


「ん?セクシー系」


「いやだー」


 そんな事言って笑っていた時の写真かな。


 突然だったの。


 前日は、元気だったのよ。


 お通夜もお葬式も 私、とんでもなく泣いてしまって、美咲のご家族に反対に慰められちゃって、本当に、申し訳ない事してしまったと思うわ。


 こんな時、いつも私の面倒をみてくれる兄貴は、今回来てくれなかった。


 後から、聞かされたのだけど、美咲と兄貴は、付き合ってたらしい。


 「びっくり!」

 

 つまりいちばん悲しいのは、兄貴だったみたい。


 私、知らなかったから、兄貴に何も言えないで、自分だけ泣いて。


 ゴメンね。兄貴。


 ずっと泣いている私の面倒をみてくれたのは、勇樹だった。


「ありがとうな。里菜ちゃんが、来てくれる様になってから、美咲は、明るくなった。とっても嬉しそうだった」


 私、もっと泣いた。


「バカー。あたし、まだ勇樹の事好きなのに、そんな事言ったら、ダブルで泣くだろう」


 困った顔をしたけど、勇樹は、私の傍を離れたりしなかった。


 兄貴は、美咲のご両親と何か話していたが、やっと私を迎えにきた。


「すみません。妹は、こんな奴なんで、ご迷惑かけました」


 ゴメンね。兄貴。

 美咲との事知らないで。


「いえ、いえ。美咲は、いつも里菜ちゃんの事を嬉しそうに、話してましたよ」


 美咲のお母さん、とっても綺麗な人だ。美咲は、お母さんに似たのね。お父さんも、とってもハンサム。

 

 この兄妹が、美形なのが分かる。


「美咲は、いつも言っていたわ。私がいなくなっても、今度は、里菜ちゃんが、私達の娘になってくれるって。だから、私がいなくなっても泣かないでって約束したの」


 ん?

 どういう事?


「やっぱり悲し過ぎて、約束は、守れなかったけど、約束通り、里菜ちゃんは娘になってくれるのよね」


 お母さん?何言ってるの?


「鈍いな、我が妹よ。お前が娘になるなんて、勇樹の嫁になるしかないだろう」


「えっ。だって私、振られたし」


「ん?俺、振ってないけど」


「だってあの時」


「あの時は、妹の新しい治療の話が、ちょうど出ていたところで、病院にいつでも行けるようにしとかないと駄目だったんだ」


 勇樹は、頭をかき、かき、続けた。


「それで、里菜ちゃんの様子が、おかしかったのか」


「兄貴!」


「いや、あの時言ったろ。勇樹は、お前の気持ちを知っているって。もしかしてお前は、分からなかったのか?お前たちは、出会った時から、誰から見ても恋人だった」


 






 




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