第2話

 兄貴と、勇樹は、中学から高校まで、ずっと同級生で、二人で、始めたバンドに、やはり同級生の野田さんを加えて、本格的に活動し始めた。


 比較的早く売れたのは、自分が作った歌が、良いからだと兄貴は、言っていたが、野田さんと、あたしは、勇樹のルックスだろうと、考えている。


 ライブ会場は、ほとんど勇樹のファンのキャーキャーと、黄色い声で満たされる。


 一方の兄貴は、ボーカル、作詞作曲担当なのに、声援は、私、両親、以上。


「のりちゃーん」


 とても控えめな、親族の応援。


 家族だからって、ひいき目にみても、ファンの数は、圧倒的に兄貴の負け。


 あたしだって、最近は、兄貴の応援が、二割。勇樹の応援が八割てとこだもの。


「里菜は、美咲ちゃんの事を覚えているか?」


「何よ、急に。あんな、忘れられないわよ」


 美咲は、勇樹の妹だ。


 初めて会った時は、驚いたわよ。顔が、とっても小さい。しかも髪がサラサラ。そんでもって、大きな目が、黒目がちで、肌が透き通る様に白いの。


 本当に、私と同じ人間?と思うほど、身体が細いし、足なんてとっても長くて、私にあんな長い足がついていたら、歩いている時、5分に1回は、足がもつれて、転ぶと思うわ。


 とにかく、とんでもない美少女で、モデルのようなスタイルなの。


 こんな妹を毎日見ているのなら、ルックス勝負は、まず無理ね。


 お前なんて、初めから無理だって?


 分かっているわよ。そんな事。

 

 勇樹にキャーキャー騒いでいる女の子たちに、言っただけ。


「あの超絶美形が、どうしたのよ?女優にでもなった?」


 何故か兄貴は、口ごもった。


「あの娘なら、すぐに朝ドラくらい出るわよ」


「美咲は、入院したんだ」


 

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