恋とギターと妹と。

@ramia294

第1話

 雨が降っている。


 熱かった武蔵野フェスの後に、冷たい雨。


 あたしの壊れちゃった心に容赦なく、染み込んでくるわよ。

 何が傷ついた心を雨が優しく包んで慰めるよ。

 

 兄貴ったら嘘ばかり。


「ウェ、ウェ。グスン、グスン」


 それゃあね。分かっていたわよ。兄貴のバンドのギタリスト勇樹が、女の子にもてるのは。


 こんな事なら、みんなに混ざって、キャーキャー言ってるだけの方が、よかったわよ。


 確かに、何か約束したわけじゃないけどね。


 何で、あたしなんかに、優しくするのよ。私、バカだから、期待しちゃうじゃない。


 もう、勇樹に恋しちゃってるわよ。


「えーん。えーん」


「分かったから、もう泣くな。だいたい里菜。心の声が、ダダ漏れだぞ」


「兄貴には、分からないのよ。兄貴の作った歌詞って、嘘ばっかり。この雨だって優しくないわよ。私に追い打ちかけてくるわ」


 兄貴は、心底困ったという顔をしている。


「別に勇樹が、お前の事を嫌いだと、言ったわけじゃないだろう。毎日ウルウルした目で見つめられ、頭から絶えずハートマークを全開に出している様なお前の気持ちなんて、あいつでなくても気付いている。その上でお前とは、特別に仲良くしていたのだから、あいつだって、お前の事を嫌いじゃなかったさ」


「ウェン。ヒック、ヒック。でも、あたしとは、しばらく会えないって、フェスで盛り上がりすぎて、告白なんてしなきゃよかったわよ。振られちゃったわよ。ビェー」


 兄貴は、迷った顔をした。


「仕方ないな。教えるなって、言われていたけど」

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