せみ時雨
私はあの子たちの姿が、あまりにも哀れで切ない感じがして家に帰っても頭から離れなかった。白昼夢というには早朝という時間で当てはまらない。男の子は汚れたランニングと黒いショートパンツしか履いていない。継ぎはぎだらけで丸坊主の男の子の脚も腕も折れそうに細い……。
私は家に帰り、マロンを玄関の横で足を洗うと階段の下に座らせた。
手を洗った私は何かしなければと思い、なぜだか炊飯器の蓋を開けておにぎりを作り始めた。母が私に何か言おうとしているが、何も言わずにテレビを見ていた。父はいつもの時間に会社へ出かけた。
普段と同じ風景はいつも、ここにある。
おにぎりを二つ作ると私は再び公園の樫の木の下におにぎりを置いた。
この気温だと早く食べないと腐ってしまうだろうと思ったが、立ち去るしかないと思ったことも不思議である。そうしないといけないような気がする……。せみ時雨だけが聞こえる静かな公園は静かで誰もいなかった。
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