第103話
「流石だな、ダン。お前一人でほとんどやっつけた様なもんだろう」
「いや、デイブがサポートしてくれると分かっているだけで戦闘が楽になるから、俺一人で倒した訳じゃない。でもそれにしても久しぶりにきつい相手だった」
そうしてデイブが宝箱を開けて中を覗き込んだ二人はびっくりする。
中には数えきれないほどの金貨が入っていたのだ。そしてその金貨をアイテムボックスに収納していると金貨の山の中から装備品が出てきた。
片手剣、腕輪、バンダナ、指輪
鑑定スキルがない二人が見てもとんでもない片手剣だとわかる。他の装備も色合いが今手にしている装備品とは全く異なっていて金色がかっている。バンダナも見たことがない様な模様が織り込まれていた。
「金貨1,000枚はくだらないぞ、これ」
「装備品も何か凄そうなのが出たな」
全てをアイテムボックスに収納すると広場をぐるっと見渡してもう何もないのを確認する二人。そうして広場から階段を数段上がると来た通路を逆に戻っていった。
背後で広場があった場所が崩れ落ちる音がする。そうして二人が廃屋に戻ると歩いていた通路が土で塞がれていった。
「どうなってるんだ?」
とダン。
「さぁ」
床のはめ板近くまで土に埋まってしまったのを見ている二人。
「一度切りのチャンスってことか」
デイブが言うとそう言うことになるんだろうなとダンも言う。
結局この日はこの廃屋の中で野営をすることにする。
周囲を見てみたが近くには全く魔獣の気配がない。
「野営場所には最適だな」
「というかNMがいるからだろうな」
ダンの言葉にデイブが続けた。
廃屋で野営をした翌日、丸一日かけても15層はクリアできず2泊することになった。一直線に向かえば翌日1日で行けたのかもしれないが二人はNMを倒した後も今まで通りに魔獣を倒しながらフロアをくまなく探索し、そうして3日目の昼過ぎにようやく16層に降りる階段を見つける。
地上に戻り、歩いてレーゲンスに戻った時には夕刻に近い時間帯だった。ギルドに顔を出してカードを見せて精算を終えるとこの日は酒場にも寄らずに宿に真っ直ぐ帰り夕食も宿で食べると二人とも早々にベッドに倒れ込んだ。
翌日、朝食を終えた二人がウィーナの店に顔を出すとそこにはなんとサムが来ていた。二人を見て表情を崩して挨拶するサム。
「いつ来たんだい?」
「昨日の朝ですよ。そして昨日の午後と今日の朝一番でこの店に商品を収めたところです」
そう言ってテーブルに置かれているお茶を飲むサム。この前初めてこの街に来てから半年も経っていない。そのことをデイブが言うと、
「ウィーナさんの希望の品を早く納める必要がありましたからね。今回多めに持ってきたので次回からはもう少しゆっくり準備して来られる様になりますよ」
「流石に商売人だね。タイミングというものをわかっているよ」
サムの話を聞いていたウィーナが言う。
「サムのおかげで希望していた以上の商品を仕入れることができたよ。これでまたオウルの人が安心できるね」
ウィーナの口からオウルという街の名前が出てきてびっくりする二人。その表情を見ていたウィーナ、
「この前ミスリルをサムに販売した時点である程度想像しているだろうと思ってね。サムは口が固い。この街にある商会の人間とは全然違う。彼には言っても問題ないだろうと思ったし、言ったほうが今後の商品の手当も楽になるしミスリルも販売しやすくなる。そう思ったのさ」
「ウィーナがそう言うのなら俺達は何も言わないよ」
デイブが言うと
「私も商人の端くれですから商売の仁義は大切にしますよ。それにお互いに全ての事情を知っていたほうが話も早いですしね。うちの店の事情も彼女には説明しているんですよ」
「一度サムをオウルに連れて行こうかと思ってるんだよ。彼なら問題ないからね。そん時はあんたら二人に護衛してもらうつもりだよ」
冗談とも本気ともとれない口調でウィーナが言う。
「俺達でよければいつでも声をかけてくれよ」
ダンがそう言った。
「ところで街の外に出ずに、今日は休養日かい?」
「いや、今攻略しているダンジョンで隠し部屋のNMを倒したら武器と装備品が出てきたんだよ、それを鑑定してもらおうと思って」
「私はお邪魔でしたら失礼しますが?」
サムが気を効かせて言ったがデイブがいても全然問題ないよと言い、腰を上げたサムはまた腰を下ろした。
そうしてデイブはまずそのダンジョンとNMがいたフロアについて話を始めた。黙って聞いているウィーナとサム。
「そしてダンがその黒虎のNMを倒したら今まで見たことがない程の大きさの宝箱が出てきてさ、中には金貨とこの装備が入っていたんだよ」
そう言ってアイテムボックスから片手剣、腕輪、指輪、そしてバンダナを取り出すとテーブルの上に置いた。
サムはデイブが取り出してる袋を見て直ぐにそれがアイテムボックスだと気づいたが何も言わずに黙っていた。ウィーナはそのサムの仕草を見たが彼女も何も言わずに黙っている。そうしてテーブルに置かれた武器と装備品に目を移したウィーナの目の色が変わった。
「ランクSS以上のNM、ダンが苦労するくらいの相手。なるほどそれ程の相手から出たアイテムだけはあるよ」
そう言ってまずは片手剣を手に取ると
「ダン、今直ぐに剣をこれに変えな。左手の剣は魔法袋に仕舞って右手の剣を左手に、右手にこの剣を持つんだよ。この剣は今まで見たことが無いほどの優れた剣だ。威力はもちろん剣自体に腕力と体力と素早さが上がる能力が付与されてるよ」
そう言ってもう一度剣を見るウィーナ
「詳しく言うと剣自体の威力は今右手に持っている剣の3倍はあるね。付与されている能力も腕輪や指輪におきかえると今装備しているものの2倍以上はあるね」
聞いていたダンはびっくりする。そして
「剣の能力は指輪や腕輪と合算されるのかい?」
「残念ながらそれはないね。ただし」
そう言って次はバンダナを手に持ったウィーナ
「このバンダナは全ての能力、腕力、体力、素早さ、二刀流効果アップ等攻撃に関わる全ての能力をアップするバンダナだ。そしてこれは剣の能力アップとは別枠だ。つまりこの剣とバンダナを装備すると全能力が今よりもずっと上になるってことだよ」
「凄い能力だ。また強くなるぜ、ダン」
横からデイブが言う。するとウィーナは腕輪と指輪を手に持つとデイブを見て
「この腕輪と指輪はデイブが持った方がいいね。腕輪は精霊魔法効果アップと同時に使用魔力の減少効果がある。つまり少ない魔力で威力のある魔法が打てる様になる腕輪だよ。しかも精霊魔法効果は今のよりも上だ。そしてこの指輪は敵対心マイナスの指輪だね」
今度はデイブがびっくりする。
「流石に強いNMだけあって落とすアイテムも桁違いだな」
「倒したらその部屋が崩れて無くなったって言っただろう?1回だけのチャンスだからねここまでのアイテムは私も初めて見たよ」
ウィーナと二人のやりとりを黙って聞いていたサムは途中から驚愕した表情になっていた。その理由の1つはもちろんドロップしたアイテムの性能が今までに見たことがない様な高性能のものであること、そしてもう1つはウィーナの鑑定能力だ。
ここまで鑑定できる人間は見たことがない。サムはその鑑定能力に驚愕する。
「私もここまでの装備品や武器を見たことがありません」
「そりゃそうだろう。普通ならどう頑張っても倒せないランクの敵だよ。この二人以外は倒せないんだからドロップはしないしね」
サムの言葉にウィーナが言う。黙っているサムにウィーナが言葉を続けた。
「この二人はランクSというレベルだが実際にはそれより2ランクか3ランク上の冒険者だよ。ギルドにはランクSまでしかないからランクSを名乗ってるけどね、実力は大陸一だろう。この二人より強い冒険者はこの大陸にはいないね、断言できるよ」
ヴェルスのワッツとレミーにはこの未来が見えていたのか。サムはウィーナの言葉を聞きながら彼らの言葉を思い出していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます