第102話
休養日、そしてフィールドでの金策をした二人は再び攻略中のダンジョンの15層に飛んだ。今回はしっかりとフロア内での野営を想定して二人はフロアの攻略を開始する。
15層も荒野のフロアでランクSSが徘徊するのは同じだ。魔獣を警戒しながら宝箱を探してフロアの中を進んでいく二人。
「四つ足のSSが3体」
ダンの言葉に岩場の裏を見ていたデイブもすぐにエンチャントした片手剣を2本持つ。すごいスピードで近づいてくる3体の大きな黒虎の魔獣。2体を精霊魔法で足止めして1体はダンが片手剣で一閃した。すぐに残りの2体もそれぞれが剣で倒して討伐する。
「足は速いがそれだけだな」
「いやらしい攻撃もないしな」
普通なら体長3メートル以上もある大型の黒虎が3体突っ込んでくるのは脅威になるが、この二人に取っては特殊攻撃のない魔獣は既に雑魚に成り下がっていた。普段から格上を相手にしていることにより魔獣の大きさにも慣れている二人。さっくりと倒すと再び進み出した。
視界に廃墟が見えると魔獣を排除しながらそこに近づいていき中を徹底的に調べていく。そして何もないと再び進み出す二人
「14層よりもさらに広くないか?」
周囲を警戒しながらデイブが聞いてきた。
「俺も思ってたところだ。1泊どころか2泊の可能性もあるな」
15層は広くて進行方向に向かって左に歩いて壁までくると前に進んで今度は反対側に歩いていく。当然時間はかかる。ダンジョンの造りがどうなっているのかは全くわからないが地上からは想像もつかないほどに広いフロアになっている。
二人に襲いかかってくる魔獣は4つ足やら獣人やらバラエティに富んでいるがそれらを全て倒しながらフロアを攻略していく二人の前に再び廃屋が目に入ってきた。元は2階建だった建物の2階部分は完全に壊れているが1階部分は今までの家屋よりも大きい。
魔獣の気配がしないなかを廃屋に近づいていき、壊れたドアを蹴破って中に入る。中にも気配を感じないとダンが周囲を警戒する。 しばらくすると、
「床に下に降りる階段があるぞ!」
中からデイブの声が飛んできた。ダンも直ぐに廃屋にはいるとデイブがいる部屋に行く。その部屋に入ると今まで感じなかった魔獣の気配がしている。
「ダンも感じるだろう?この部屋に入ったら魔獣の気配がしたんだよ、それで床を調べてみたらこのはめ板を外すと下に降りる階段が出てきたという訳だ」
「なるほど。秘密部屋への入り口っぽいな」
ダンが言うとニヤリとするデイブ。木の階段が地下に斜めに伸びている。ダンが先に階段を降りて地面に着くと松明に火をつけた。続いてデイブが階段を降りてきた。
地下は土の壁の通路になっていて奥に伸びているが真っ暗だ。通路の幅は2メートル、高さも2メートルちょっとで奥に伸びていた。
デイブも下に降りると松明に火をつけた。そうしてダンが前、少し間を開けてデイブが続く。通路を進むと感じていた気配がだんだんと大きくなってきた。
「ランクSS以上だな」
背後から声をかけてきたデイブ。ダンも同じ様に感じていた。薄暗い通路を20メートル程歩くとその先が左にほぼ直角に曲がっていが。そこを曲がるとまた20メートル先で通路は右に曲がっていてその先から灯りが僅かに漏れてきているのが見えた。
二人が松明を消すとほのかな灯りが出ている場所に近づいていく。通路を右に曲がると
10メートル程先に数段降りる階段がありその階段の先にある広場の様場所の一部が見えていた。
抜刀している二人はそのまま階段の上に立つとそこから中が見えた。広場だと思っていたところは土の地面で円形状になっている。ギルドの鍛錬場を円形にした感じだ。
そしてその中央には二人が見たことがないほど大きな黒虎が1匹立ってこちらを睨みつけている。体長は7、8メートルはあるだろう。足だけでダンとデイブの身長よりも長い。
「いつもと同じだ!」
ダンはそう叫ぶと広場に飛び出した。続けてデイブも広場に飛び出すいつもの様に前後から魔獣を挟み込む位置取りだ。
ダンが飛び込んだと同時に黒虎がダンに襲いかかってきた。来たと思った次の次の瞬間には今までダンがいた場所の背後の壁が大きく爪でえぐられる。
「速い!」
デイブが思わず声を出したがダンは予測していたのかギリギリでかわしながら左手に持っていた剣で黒虎の左の前足に傷をつけていた。黒虎が避けたダンに再び襲いかかるがそれをまたギリギリで交わし今度は右前足に剣で傷をつける。
ギリギリで避けてるんじゃない。わざとギリギリで避けながら剣を振るってやがる。
2度見てダンの戦法を理解したデイブ。やっぱりあいつは半端ないな、あの動きを見るにダンはまだ余裕があるぞ。
そう思ってみている間にダンは4度攻撃を交わし前足にそれぞれ2度剣で傷をつけている。これでとりあえずタゲはダンになったと思ったデイブが背後からその前足を狙って精霊魔法を撃ち込む。お互いに何も言わないが阿吽の呼吸で黒虎の前足を集中的に狙って攻撃していく。
突然ダンが大きく身をそらして壁を蹴って移動した。その直後に黒虎の口から炎の塊が飛び出して広場の壁に直撃して大きな爆発音を立てた。
魔法も使えるのかよ、デイブはエンチャントを水にして背後から魔法を打ちながら剣で後ろ足に切りつけていく。
ダンは攻撃をかわしながら着実に両前足の同じ箇所に剣を振るって傷をつけていた。少しでも目をそらせればやられるというギリギリのやりとりに興奮しながらNMと対峙していると黒虎の閉じられていた口が少し開いて奥が赤くなっているのを見ると瞬時に壁を蹴ってその場から離れる。直ぐに炎の塊が壁を直撃した。
ますます楽しめそうじゃないか
ニヤリとして黒虎の目を睨みつけながら剣を振るうダン。
あいつ、笑ってやがる。ふふ、やっぱりダンは最高のパートナーだぜ。
黒虎のNMは自分の攻撃が全く当たらず、一方で執拗に前足に剣と魔法を喰らってイライラしていた。そして自分では気がついていないが動作が当初に比べて遅くなっていた。
ダンはその動きの変化を見逃さずに剣をさらに激しく動かして前足に傷をつけていく。口を開く仕草が見えるとその場から離れそして再び足を攻撃していく。
デイブの精霊魔法も的確にダンが切り裂いた箇所に命中していた。
そうしてついに前足で踏ん張れなくなった黒虎が崩れ落ちる様に前足から地面に身体をつけた瞬間にダンが正面から黒虎の目と目の間に片手剣を突き立てた!
剣を突き立てて直ぐに剣を離して顔の前から離れるダン。眉間に剣を突き立てられた黒虎は大きな咆哮と共に顔を上に向けたと思うとそのまま顔をドスンと地面につけるとしばらくして光の粒になって消えてく。そうして黒虎がいた場所にはダンの片手剣だけが残り、直ぐにその場に今までダンジョンでは見たことがない程の大きな宝箱が現れた。
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