第10話

朝の食堂。


いつもよりはやく目が覚めたザックが空腹を感じて1階に降りると、ヒロとリュカが朝食の準備をしていた。


「おはよう。いい匂いだね」


ザックが階段の途中から声をかけると、二人が同時に振り返った。


「あ、ザックさん。おはようございます」


「おはようございます。ザックさん。体調はどうですか?」


目を細めて笑う顔がそっくりだ、とザックは思った。


「ありがとう。もう大丈夫みたいだ。お腹が空いて、いつもよりはやく目が覚めたよ」


そう言うとザックは軽やかな足取りで階段を降り、カウンター席に滑り込んだ。

素早くヒロがザックの前にランチョンマットを敷き、フォークやスプーンを並べてくれた。


「お腹空いたんだけど、すぐに食べられるもの、ないかな?」


朝の食堂は、パンの焼ける匂いとベーコンの焼ける匂いが広がっていた。


「ちょうどさっき、パンが焼き上がりましたよ。ベーコンに目玉焼きも」


リュカがカウンター越しにザックの前に立ち、オレンジジュースをグラスに注ぎながら答えた。


「もうすぐ、焼きりんごも焼き上がりますよ」


ザックはカウンター越しにオレンジジュースを受け取りながら「うーん」と唸った。


「どれも美味しそうだね」


「全部食べようかな」


リュカが「すぐ用意しますね」と言って手際良く盛り付けを始めた。

ザックはリュカが木のプレートにベーコンを敷き、目玉焼きを乗せ、てきぱきと準備する様子をぼんやりと眺めていた。その隣ではヒロがフライパンを温めながら、手際良く卵を溶いていた。


たまにはこういう朝も悪くない


ザックは頬杖をついて目を閉じかけた。そのとき。


「今朝は早いな。もう体調はいいのか?」


背中から声をかけられた。振り返ると、バートが立っていた。

早朝の訓練を終えてきたようだった。

バートは毎朝、一人朝の訓練をしてから朝食をとるのが日課であり、ザックが知る限りその日課を欠かしたことはなかった。

バートは水浴びをした様子で髪がまだ濡れており、首にタオルをかけていた。


「おはよう。バート」


「ヒロのお茶がよく効いたみたいだ。今はお腹が空いている」


「そうか」


バートは短く返事をして、ザックの隣に腰掛けた。

ヒロとリュカに短く挨拶すると、レモン水を頼んだ。


リュカがザックの朝食と一緒にレモン水を運んできた。

プレートを3つに分けて山盛りに盛られた朝食を見たバートは、何かを言いかけたが黙ってレモン水を口に運んだ。


「・・・リュカ、俺にも朝食を頼む。プレートひとつに収まる程度でいい」


ザックの前にプレートを並べながら、すぐご用意しますね、とリュカが元気に応えた。

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