第21話 不器用な王子様

遠い遠い昔、とある国でのお話。


その国には1人の王子様がいました。その王子様はとっても優しくて、不器用で、人一倍人の気持ちがわかる人でした。

しかし王子様は不器用なので、周りの人には恐ろしい王子様だと思われていたのです。


その国には、たくさんの悪い人がいました。

泥棒や人さらい、悪い役人、その上王子様を支えるはずの貴族までもが悪いことをしていたのです。


ある時それを知った王子様は「悪い人を懲らしめてしまえばひとびとはより喜ぶはずだ。」と考えました。

そして悪い人を懲らしめるために、たくさんの兵士を用意しました。


王子様はまず手始めに人々が安心して移動できるように泥棒を懲らしめることにしました。

しかし王子様は不器用なので周りの人に泥棒や人さらいを懲らしめることを伝え忘れました。


そのために王子様はたくさんの泥棒や人さらいを捕まえ、懲らしめたのに何も知らないみんなは

「王子様は人をつかまえて、苦しめることが好きらしい」

という噂を流し始めたのです。


しかしそんな噂を知らない王子様は次に悪い役人や国を支えずに好き勝手やる貴族を懲らしめることにしました。


しかし何も知らない王子様は、またもやみんなに伝えずに悪い役人や貴族を懲らしめました。


「王子様は人をつかまえて、苦しめることが好きらしい」

という噂を信じていた皆の間で

「王子様それを止めようとした部下までもを苦しめ、殺したらしい」

という噂まで流れるようになりました。


皆の中で

「王子様は人を苦しめることが好きらしい」

「王子様に逆らえばみんな殺される」

「この国の王様が今の王子様だとみんなが苦しむことになる」

というような噂が流れ、みんなを苦しめる王様を退治しようという流れが出来ました。


そしてある日、王子様を懲らしめるべく人々がお城へとやって来ました。

優しい王子様はみんなが自分に対して怒っているなんて知らないので、みんなをお城へと招きました。


するとどうでしょう、皆は王子様を捕まえ牢屋へと閉じ込めてしまいました。


王子様は牢屋の中でなぜ捕まったのか、そきてなぜ牢屋に閉じ込められてしまったのかが理解できませんでした。


しかしある日、王子様が牢屋から出された時にある人が言った言葉によって王子様は分かったのです。


「人々を苦しめる王子様なんていなくなってしまえ」


王子様は悪い人を懲らしめたつもりが、皆には悪い人を懲らしめているということが伝わっておらず、やみくもに人を苦しめていると思われていたということに。


全てを理解した王子様は人々によって国から追い出されました。


もうこれ以上誰も傷つけたくない王子様は誰も知らないひっそりとしたどこかへと消えてしまいました。


おしまい。

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