第19話 嘘

『人を好きになったことは無い。』なんて嘘、なんで吐いたんだろ。


手遅れになって今更後悔をする。好きなら好きと早く言えばいいのに、臆病な僕は何も言えず意地っ張りな俺は空虚な見栄を張る為嘘を吐く。


その度胸が痛むのに気付かぬフリして突き進む、その先には何もないと知っていても。


なんてカッコをつけて言ったところでなんのことは無い、ただただ怖いだけなのだ。


幸せが、振られる恐怖が、そして堕落してしまうであろう自分が。


『自分は強い、決して堕ちない。』なんて確固たる意志を持っていると言うけれど、それだって自らの弱さを自己暗示で隠そうとしているだけに過ぎない。


なぜ嘘をつき始めたのだったか。

記憶は定かではないがたしか裏切られたのが最初だったと思う。


嘘に騙され、自らも嘘を吐き、そしてその楽に周りが動くことに快感を覚えた…たしかそのような感じであったと思う。


とは言えども恋愛以外では虚言癖と言えるまでに嘘を吐くわけでも無ければ他人を傷つけるような嘘を吐く訳でもない。無害な話である。


これは、ただただ嘘で塗り固められた空虚な人間の話である。


読者様はこのようなつまらぬ中身のない人間にならぬ事を願ってます。

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