第3話 物憂げな貴方へ
拝啓
物憂げだった貴方へ
貴方は何時も何か、物憂げな様子で窓の外を眺めていましたよね。私はそんな貴方を見ることが大好きでした。けれどもうそれも出来ないのですね。
毎日を何も面白いことがないかのように過ごし、何時もぼうっとしているように見える。それでいてどこが惹かれるものがある。貴方の所作ひとつひとつに私を惹きつける魅力がある。
貴方はもう覚えていないでしょうが、あれはもう半年以上前の事だったと思います。私が一人封鎖された屋上への階段の半ばで泣いていた時に私に声をかけてくれた。私はそれだけで嬉しかった。
私は何より孤独が怖かった、いや、今でも孤独が怖い。けれど貴方を眺め、貴方と話しているその時だけは何よりも孤独を感じなかった。ただそれだけで嬉しかった。
親友と呼べるような友達もなく上辺だけの付き合いの多い中、唯一、唯一心から信頼できた人、それが貴方でした。
それなのに貴方はもう、会うことは出来ないのですね。
私は貴方が首を括ったと聞いた時に涙が止まりませんでした。「何故貴方のような人が首を括るのか」と。そして貴方の遺書の内容を聞き、そして理解しました。しかし私は死ぬまで共感することは出来ないでしょう。
何せ遺書には「僕はこれから死ぬ。先の見えない未来が怖い。さよなら。そしてもし『孤独を恐れる君』がこれを見るならば最後に一言。ありがとう、楽しかったよ。」なんて書いているのですもの。
けれどそれがあなたの洗濯ならば私にはそれを否定することは出来ない、いや権利すらありません。
それでは、さようなら。またいつか会える事を。
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