第4話 孤独を恐れる君へ
拝啓、孤独を恐れる君に。なんて気取った言葉をかけるつもりはさらさら無い。けれどそんな君と出会ったのももうかなり昔なように思える。
いつだったか覚えてるかい、君が踊り場ですすり泣いていた事を。その時特に何も考えずにふらふら生きていた僕は気まぐれで声をかけたんだ。
それから僕は君について色々と知った。君には親友と呼べる人がいないこと、上辺だけの友達付き合いに疲れたこと、そして君が何よりも孤独を恐れていること。
だから僕は君と、いや傲慢すぎる。だが僕の暇つぶしで始めたことを今更投げ出すのもなんか違う。だから僕はそのまま何事も無かったかのように流した。
それからどれぐらい経ったか僕はその日もつまらない日々を無為に過ごしていた。その時ふと不安になってししまったんだ。『何のために生きてきたんだろう』って。
それは大した不安ではなかったのかもしれない。けれどその日から僕は、わけもなく不安に駆り立てられた。
何なら全人類に嫌悪感を抱かれていたり、それどころか関心を向けられていないのではないかと疑心暗鬼に陥ってしまっていた。
誰のために生きているのか。何を目的として生きているのか。僕に何が出来るのか。無為に過ごしているだけの僕になんの価値があるのか。誰かの都合のいい道具としてしか必要とされていないのじゃないか。
何も信じることが出来ない。僕の気分ひとつで変えてしまったかもしれない君には悪いけど僕が生きるにはこの世界は辛すぎるらしい。だからこそ僕はいない方がいいのだろう。
もし僕が死んだことを「君」が知ったのなら悲しむのだろうか、いや「僕」にとっては君の感情は些細なものでしかないはずだ、いや些細なものでないといけない。
遺書を書いてみたは良いものの、味気がなくてつまらない。
「僕はこれから死ぬ。先の見えない未来が怖い。さよなら。」
こんなものじゃ面白みに欠ける、なら君、いや
『孤独を恐れる君』
への一文も追加しようじゃないか。彼女には楽しませてもらったしね。
こんなものでどうだろうか
「そしてもし『孤独を恐れる君』がこれを見るならば最後に一言。ありがとう、楽しかったよ。」
さよなら、皆。会うことがあるならばまた次の世界で。
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