第2話 神殺しの贄
信じて貰えないだろうが私の一族は神殺しの一族と呼ばれている。現代日本で声を大にして言っても鼻で笑われるのがオチだが実際に技術が継承されている。
そんな一族の長子である私の役目はただ1つ、祟り神を一柱葬ることである、但し自らを犠牲とした上で。怖くないと言ったら嘘になる。だけど一族の運命として仕方ないからと自分の気持ちを押し殺し、気丈に振る舞うことで自分の気持ちを隠し続けた。
そんな私ももうすぐ最後。
次の神在月に祟り神をその身に宿し、神殺しの武器によって死ぬ。そうすることで私もろとも神を殺すことができるから。でも、やはり怖いものは怖い。
死にたくない。
私の意思なんて関係ないか...
タタリ等の負のエネルギーと相性のいい黒色の装束に着替え、ハレの日に食べるものにあえて黴の生えさせた食べられるかも怪しいような餅を無理に飲み込む。そして濁りきった酒をのむ。そして一月前から練習していた呪詞を唱える。
『穢によりて堕ちし神よ、我が身を穢し給へ。我が身を穢す神よ、我が身に宿り給へ。』
時間を開けることなく身体中が重く、蝕まれるような感触に包まれる。
四肢はだんだんと痺れ、呼吸は急激に浅くなる。
苦しい。つらい。いやだ。死にたくない。なんで長子という理由で死ぬ必要が。いや、考える必要なんてないか。
もういいや。
『お父さん、殺して』
『あぁ、一族の為、ありがとう』
私はこの時のために生きていたんだ。
さよなら。
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