十月三十六日:投票

【投票結果の結果、本日の処刑は『元バスケ部』に決定しました】



「終わり、か。ここから抜けられるならそれもアリかもな」

『元バスケ部』は椅子に座ったまま、足元を見つめて深く息をついた。

「あぁ、あいつに諦めるなって言われたのにな……」

 自嘲するような笑みを口元に浮かべると音もなく倒れた。


「本当に彼は妖狐だったんでしょうか……」

『保健委員』が声を震わせた。

「そう思うしかない。じゃなきゃ、俺たち人間に勝ち目がないからな」

『風紀委員』が唇を固く引き締めた。



 側から入りづらそうにふたりを眺める『編入生』の視線に気づき、ふたりが順番に口を開いた。

「ちょうど去年の今頃、この文化祭に来て志望校を変えたんだ。先輩後輩の垣根なく団結していて、自分もここの学生になりたいと思ったんだ」

「僕もです……『風紀委員』くんとは文化祭で会って、お互い入学式で会えたらいいねって話して頑張って何とか合格して……」


「そっか……俺らさあ、あんまり話したことなかったよな。同じ学年だけど」

『編入生』はポケットに手を突っ込んで無理に明るい声を出した。

「そうですね。元々僕は『風紀委員』くん以外に友達も少ないですし……」

「こういうギスギスした議論の前にさ、もっとちゃんと話しておけばよかったなって」


「そんなことを言われても明日追求の手を緩めたりはしないぞ」

『保健委員』が不安げに見上げる。『風紀委員』は生真面目そうな太い眉をひそめて続けた。

「だが、疑いはしても憎くんだりはしたくない。全部が終わったらそのとき話そう。それでいいか」

「クソ真面目な奴……」



 苦笑した『編入生』の背に『先輩が声をかけた』

「今まで遺体を運んでくれていた『元バスケ部』はもういない。俺たちが代わりに教会まで運ぶぞ」


『編入生』は駆け寄って傍のテーブルにかけてあったクロスを取った。

 片方の端を摘んだ『先輩』は沈鬱に布を広げた。

「なあ、『先輩』。明日で全部終わるよな」

「そう願ってるけどな」

「ちゃんと『先輩』が戻ってきてもいいように荷物はそのままにしてるからさ」

 答えはなかった。


 静まり返ったロビーにカボチャのランタンが揺れていた。



 生存者:五人


 占い結果:(○→人間、×→人狼)

『映研部』→『図書委員』○、『元バスケ部』○、『生物部』○→『風紀委員』×

『図書委員』→『文芸部』○、『剣道部』×、『風紀委員』○

『生物部』→『文芸部』○、『剣道部』○


 霊能者結果:

『美術部』→『吹奏楽部』○、『剣道部』○


 処刑投票結果:

『吹奏楽部』、『剣道部』、『図書委員』、『映研部』、『元バスケ部』

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