コンタクト
華楓月涼
コンタクト
スマホのアラーム音が鳴り響く。
スムーズで何回も来る返される毎朝の恒例行事・・・。
あーまだ寝ていたいのにもう、朝か・・・。
寝ぼけながら枕元にある眼鏡に手をやりおもむろにかける。
さぁ出勤の準備するか。そう思いながらベッドから出て洗面所に向かおうとするとドアフォンがなった。
朝早いのに?まだ、8時になったばかりなんだけど。
「おはようございます。お荷物です。」
「えっっ何かな?頼んだ記憶ないけど。」
「アルファコンタクト様からですが受け取り拒否しますか?」
「あっいや・・・。受け取ります。いつものコンタクトレンズ頼んでる会社なんで頼んでたの忘れてたのかもしれないですし。」
「じゃここに、サインください。」
バタン・・・。ドアが閉まりしばらく考え込む。
いつ頼んだっけな~。まぁ、丁度なくなるとこだし良いかな。
中身を確認しておこうと段ボールを開封したら封書がはいっていた。
封書には『おめでとうございます!!』と書いている。
「なんだ?なんか当たったってことか?」
封書を開けると、『いつも、弊社をご利用いただき誠にありがとうございます。ご利用頻度の高い貴方様に弊社の最新の最高級コンタクトレンズをお届け致します。なお、ご使用前に下記のQRコードにて必ずご登録いただいてからご使用くださいますようお願い申し上げます。ご登録なくご使用いただいた場合、不具合等で損害賠償事案に発展致しましても弊社は一切の責任を負いかねます。それでは、快適なご使用となりますように。』
「なんだ、こりゃ・・・。まぁ、試供品を登録して使ってくれってことだな・・・。手元の残りも少ないし使ってみるか。」
ここから、登録してっと。ピコン・ピコン・ピコン・・・。『ダウンロードが完了しました。使用上の注意をよく読んでから装着くださいますようお願い申し上げます。なお、このコンタクトレンズは、効果をよりよく引き出すために装着後一定の時間は外せません。一定の時間がたちますとアラームでお知らせ致します。』
なんだか・・・変なコンタクトだな。とりあえず、つけてみるか視界がクリアになることを期待してっと。
両眼に装着した途端だった!目の前が発光しだした・・・。うわ、眩暈か???いったい・・・。
落ち着いて鏡の自分を見る。いつもの自分だ・・・。だけど鏡に数字が発光して映し出されている。さっきまでなかった数字・・・21011031・・・なんだ???この数字は?
気を取り直して、母親を呼んだ。
「この洗面所リフォームでもしたの?」
「何言ってんの?するわけないでしょ。どうしたの?朝からそんなに大声出して。」
「いや、数字が出てるって。」
「数字?今日の日付でしょ?それ、前からついてる機能なんだから取り立てて言う事?」
「えっっ・・・・・・。そんな、ちがうって・・・そんなの見た記憶ないけど。」
つぶやくように言う。
「じゃあ今日は、何年何月何日?」
「はぁ~朝から何よ。2101年10月31日!!」
「なんて?!朝から冗談言わないで・・・。2021年・・・。」
「ちょっと、何年前?それ、おじいちゃんの時代の年代でしょ。確か・・・年号は、令和だったかしら」
至極当然に答える母親にうろたえる自分がいた。そして、目線をスマホに落とす。
『2021年10月31日』
いつもの部屋、いつもの・・・何もかも普段と変わらない。なのに時間だけが進んでいる。
どういう事なんだ???部屋と親だけ同じなのか???一体何が同じで何が違うんだ???
立ち眩みを起こしそうな気分のまま洗面所から出て、窓の外を見る。そこには、見覚えのない風景が広がっていた。いつもなら、マンション下の公園に登校する園児や児童たちがいて、スーツ姿のサラリーマンの見える・・・そんな光景ではなかった。
ただ、高層ビルが立ち並び、ドローンがカラフルなライトで照らしながら飛び回っている。太陽があるのかないのか分からない黄砂に覆われたような空。誰一人歩く人は居ない。時折、一人乗りの車のようなものが横切る・・・。
愕然として座り込む。
いったい・・・・・・・。どうなってんだよ。
振り向くと母親の首筋からコードのようなものがつながれている。
「何やってんだよ・・・。」
「何って、さっきから大丈夫?充電してるだけでしょ。もうそろそろ早く義体にしたほうがいいんじゃないの?成人して生身は、いろいろと面倒なこと多いんだから。珍しいって言われるでしょ?今どき。」
そんなことを言いながら先ほどまでつながれていたコードを外し、鼻歌を歌いながら自動掃除機のリモコンを手に掃除を始める母親が目の前にいるのだ。
自分の部屋に戻り自問自答をする。
ちょっと変な夢を見ただけだ。会社、会社に行かなくちゃ。
着替えをするためクロゼットのスーツを着込み。机に広がった筆記用具をまとめ出かける準備を淡々と進める。きっと、ドアを開けたら元通りの風景に違いない。そう、念じてドアを開ける。
開けた途端、ぎょっとした。母親が目の前にいたからだ。
「どこ行くつもり?」
「えっ会社だけど・・・。」
「その格好で?外へ行くつもりなの?さっきから様子変だから見に来てみれば。」
「いや、仕事行くのにスーツは当たり前だと。」
「一体、いつの時代の話してるの?もう一回、さっきへたり込んだ窓まで行って外確認してみなさい。」
いわれるまま、窓へいき外の光景を見る。やはりどこを見ても人がいない・・・・・・。
「なんで、どうして誰もいないの?」
「やっぱり、おかしいわ。サービス呼ぶわ。」
「サービスって何?」
「今みたいに、過去の人間みたいなこと言うようになった人が出たら問合わせするセンター。義体にせず肉体がそのままの生身の人は、外のガスの影響で、ちょっと脳の伝達がおかしくなるって。そんな人が出始めてるから報告してサービスを呼ぶように政府から連絡来てるのよ。ネットでもずっと出てる。まさか、自分の子供がなるなんて・・・。お母さんの子供のころみたいに病院みたいなところはほとんど残ってないから。センターに言って、サービス来てもらうしかないでしょ。」
「無理、無理、無理。」
バタン!!
もう一度部屋にこもる。
頭を抱えてベッドに座り込む。おかしいって!!どうなってるんだよ。政府とかありえない。そんなの呼ばれたらどこ行くんだよ。やばすぎる・・・・・・・。
天井を仰ぐと天井に数字が・・・びっしり書いてある。
「うわぁぁぁぁぁ。」
涙が零れ落ちる。完全に思考が崩壊しそうになった。枕で顔覆い。どうなってるんだよ。と何回もつぶやく一体何したんだ!!
ふっと我に返る。そうだ、コンタクトだ。コンタクトつけて、それから、それから・・・・・・・。
もう一度天井を見上げる。20221031.20231031.20241031.20251031・・・・・21001031・・・・・・。
これ、ずっと10月31日でタイムリープしてるのか?
もう、・・・・・・80回目。気づかせるために毎回天井に書いた?自分自身で?
1年毎に何がどうなっているんだろうか?多分このコンタクトが届くことで始まるんだ。
それなら、コンタクトをつけなければいい・・・けれど、最初の地点にいる天井には、何も書いていないんだ・・・。どうすればいい?コンタクトはアラームが鳴らないと外れない。一体誰が何のためにこんなシステムを作っている?
最初の頃のリープは、時代に誤差が無い。だから、違和感があまり感じないままだったはず。
これを天井に書き始めたのは・・・時代背景が大きく進みだしてるところにリープしたあたりだろう。
何か、もっと手掛かり残してないのかよ。自分で自分に腹が立つ。
リープ後、どれくらいの期間その場にいるのかも分からない。
このまま、サービスとやらが来てもし、変なとこに連れていかれたら?とにかく、そんな訳のわからないとこには行きたくない!!
その時、スマホが青白く光った。
アラームか?でもこのまま帰されてもまた、あの日の朝だ!!!回避する方法を探さないと戻っても同じ恐怖との闘いだ・・・・・・・。
ニュース速報だった。
ガスの濃度が最高値を示し、死者の数が1000万人を超えた。
ガスに含まれる有毒物質の除去は進んでいるがウイルスの消滅までは未だ至らず。
そのニュース速報を見てから、スマホでこの80年間の出来事を追いかけた。
ざっと10年単位で天災が増え続け、世界中が対応に苦慮し続けている。
そして今の様だ・・・。多分連れていかれれば義体にされ、記憶もすり替えられるのかもしれない。
恐ろしい世界になっていた。
とにかく、元の世界に戻りたい。リープし続ける状態を止めたい!!
さっき、やたらと机の上が散らかってて・・・・・・・慌ててそのまま、カバンに押し込んだけど。
いつもは、あんな風に散乱させたりしない。
カバンをひっくり返してベッドに広げる・・・。
何か?何か?ないのか?
あのコンタクトが届いてしまえば必ずつけてしまうんだ。だから、届かないようにしなくちゃいけない。
あの会社の登録を消す?でも、未来で消しても意味がない・・・。せめて、一年後の自分が気付いたなら、タイムリープはその次の段階で止められてたはずなんだ。あ~なんてばかなんだろう。
その時、コトンとベッドから黒い塊が落ちた。
これ、?
この時代の記憶媒体?
何かヒント記録してるのかな?
けど、どうやって使うんだろ?
スマホで写真を撮りその形状のものをぐぐる。
「それを握りしめろ!!」
その黒い媒体が光るとともに声が聞こえた。
光と共にアラームが鳴り響く
あーまた、元に戻される・・・・・。
記憶が飛び、落ちていくような感覚の中、握りしめる黒い媒体・・・。
そして、
スマホのアラーム音が鳴り響く。
スムーズで何回も来る返される毎朝の恒例行事・・・。
あーまだ寝ていたいのにもう、朝か・・・。
寝ぼけながら枕元にある眼鏡に手をやりおもむろにかける。
さぁ出勤の準備するか。そう思いながらベッドから出て洗面所に向かおうとするとドアフォンがなった。
朝早いのに?まだ、8時になったばかりなんだけど。
「おはようございます。お荷物です。」
そうあの日に戻った自分がいた・・・・・。
黒い媒体を握りしめて。
コンタクト 華楓月涼 @Tamaya78
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます