「血の家」

第24話

「貴様っ！？　何だっ！？　その態度はっ！」

「・・・私は、何も、明人さまの言葉に

　逆らうつもりなど....！」

「仮にもお前は、この、叶生野の人間だろう！？

　それで叶生野の一族の私に向かって

　その口振りは何だ！？」

「ガチャ」

「(明人―――)」

「尚佐御大は、生前よくここに

　来てたんだろう！？」

「確かに、それはその通りですが....」

「ナニ、あれ」

「明人と正之みたいだな.....」

征四郎たちの車が、なだらかな山道の

中腹辺りの家屋の先で車を止めると、

その庭に明人　そして正之が

何か怒鳴り声を上げながら目の前の

作務衣(さむえ)姿の男に

大声をあげているのが見える

「確かに以前、尚佐さまはこの鷺代の家には

　よくお越しになっておられましたが―――」

「だったら、御代はここで

　何かをしていたって事だろう？」

「お、おい、明人」

「(・・・・)」

かなり距離がある征四郎たちに聞こえる様な声で

怒鳴り上げている明人に、隣にいる正之が

宥(なだ)める様に諭(さと)す

「どこで、その話を聞いたかは知りませんが

　特に、尚佐さまがこの家で

　何かをしていたと言う事は―――」

「この家で、茶碗でも作ってたと言うのか！？」

"ガチャンッ"

「あ、それは―――」

「御代程の人間が、わざわざこんな山外れまで来て

　いそいそと茶碗作りでもしてたと言うのか！？」

「お、おい―――」

土窯(つちがま)の脇に置いてあった

茶碗の様な器を明人が地面に叩きつけたのを見て、

隣にいた正之が止めに入る

「言え！　御代は、

　ここで何をしていたんだ――――ッ！？」

「その様な扱いをされる方に

　私は話す事はありません....」

「な、なんだと！？」

「・・・・」

ふと、征四郎が脇に目を向けると

いつの間にか隣にいた善波がいなくなっている

「おい、明人――――」

「っ―――、！　....兄さん」

「何を興奮してるかは分からんが

　少しは落ち着いたらどうだ？」

「・・・

　――――チッ」

"バッ"

自分の肩に手を置いていた正之の手を

明人は振りほどく

「・・・・・」

"ザッ　ザッ　ザッ　ザッ　ザッ――――

「お、おい、行くのか？」

「――――」

「ガチャ」

そのまま正之の言葉に返事せず

明人は車に乗り込む

「何だ？　何があったんだ？」

「あなたは.....？」

突然自分の側に来た善波に、

男は戸惑った様な表情を見せる

「ああ、俺は―――　....アイツの兄貴だ」

「では、叶生野、の―――？」

「ああ、善波だ。

　アンタは、鷺代の家の人間か？」

「―――ええ。」