第9話

「ブロロロロロロロ....」


「しかし、あまり大した事は


 分からんかったな!?」


善波が、車のハンドルを握りながら


助手席に座っている征四郎を見る


「(――――....)」


何も思う所が無いのか、黙って征四郎は


助手席の窓から見える叶生野荘の景色に


目をやる――――


「一男さんの話だと、親父は


 次の御代を俺や尤光にする様な


 口振りをしていたが....っ!」


「・・・・・」


まるで息継ぎをしていない様な様子で喋る


善波の言葉を、窓の外を見ながら


征四郎は何となく聞いている


「....近藤が出した遺言書に書かれていたのはっ!


 "征佐"の事だろうっ!?」


「....確かに」


「じゃあ、それで、一体なんでっ


 尤光や俺じゃなく、 "征佐"がっ 


 次の御代になるんだっ!?」


"確かにそうかも知れない"


先程訪れた、保瀬家。


「(あの、一男と言う老人は、話を聞けば


  尚佐御大に最も近い関係で


  仕事をしていた筈だ――――)」


「一男の爺さんもっ 尚佐祖父さんから話とかは


 聞いてなかったのかっ!?」


「(・・・・・)」


だが、今、一男から話を聞いたところによれば


一男は次の御代には今隣に座っている善波か


叶生野家の長女 尤光になると


思っていたと言っていた


「(―――― …)」


「おいっ!? 次はっ どこに行くんだっ!?」


「とりあえず、尚佐御大に


 生前、ある程度近しい関係を持っていた


 人間の所に行くべきだと....」


「―――そうだなっ!」


「ブロロロロッ」


「(―――"征佐"か....)」


「ガタッ」


「ガタタッ」


あまり舗装されていない、


窪突(おうとつ)のある道を走る車に揺られながら、


征四郎はこの先にの道にある、


来宮(きのみや)家の事を考えていた....


「(....―――――)」

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