第7話

「おお、着いたぞ」


「・・・・・」


尚佐の邸宅から、十五分程車を走らせ


広大な山岳地帯一帯に広がる叶生野一族が住む


"叶生野荘"


の中を善波、そして征四郎の二人は


進んで行く―――――


「・・・・」


車の中から、征四郎は森や丘の上にある


いくつかの建物に目を向ける


「ここは、一体――――...?」


「....ああ、さっきから話してる通り


 "征佐"が、この叶生野荘のどこかの


 家の者なら、それに詳しい人物に話を


 聞くのが筋かと思ってな――――」


「それが、この、"保瀬"家?」


「そうだ。 この、保瀬の爺さんは、


 尚佐祖父さんとは年も近かったせいか


 年をとって、この叶生野荘から


 ほとんど出なくなった尚佐祖父さんの


 仕事のやり取りや他の色々な雑務を


 尚佐祖父さんに代わって


 任されてた家だ―――――」


「じゃあ、御代の事については


 かなり詳しく知ってるって事か」


「・・・まあ、体よく行ったら尚佐祖父さんの


 "側近"みたいなもんじゃないか?


 ――っと、 降りるぞ」


「・・・・」


「ガチャ」


「(車―――、)」


「先に誰か、ここに来てるみたいだな....


 ....あの車は――――」


「おや、征四郎くん。」


「(明人――――)」


保瀬家の邸宅と思われる門の入り口の前に


止まった何台かの黒い車の中から、


叶生野家の三男


"叶生野 明人"


が降りてくる


「・・・・」


明人が、車から降りてきた善波と征四郎を


何か含みを持った様な表情で見る....


「(――――、)」


何が、と、口には表しずらいが、


この、明人。


「まさか、征四郎君が善波兄さんと


 一緒にいるとは――――」


「たまたま、御代の屋敷に残ったのが


 善波さんと、俺だったもので―――」


「―――ほう。


 私は、てっきり征四郎君も、


 何かと興味がない様な素振りを見せて


 実は、"御代"の座を


 欲しているのではないかと――――」


「そんな事は――――」


「――――....」


話も早々に、明人は征四郎と善波の前から立ち去り


保瀬家の屋敷の中へと入って行く


「・・・・」


「.....明人の事は、好きじゃないみたいだな?」


「―――フッ」


善波の一言に、征四郎は


薄っすらと口の端を上げる


「まあ、征四郎君の事業が


 この叶生野家の中でも目立ってるから


 明人は、征四郎君に、少し


 対抗意識みたいなものがあるんじゃないか?」


「それならそれで、構わないが....」


「それより、俺達も屋敷の中に入ろう」


「――――ええ。」

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