第6話

「征四郎君は、どうするつもりだ?」


「―――いや....」


「君は、尤光や正之と一緒に


 征佐、を探しに行かないのか?」


「・・・・」


善波の言葉に征四郎は部屋の中から、


窓の外へと視線を向ける


「(俺が "御代"を....)」


元々、征四郎の家 鴇与家は


叶生野家からはまるで家格の低い、


取るに足らない様な家柄と見なされていたが


征四郎の母、"鴇与 雪絵"が


元々叶生野の一族の出自であるせいか


尚佐の目に留まり、そのおかげで鴇与家は


尚佐のいる叶生野家においても


ある程度の立場と家格を


保証される事になったが.....


「(俺には、御代の話は関りがない――――)」


下手に経営の才覚があるせいか、


叶生野家の一族の中でも征四郎はある程度、


重要な立場に収まっていたが、所詮自分は


叶生野の中では傍流の


枝葉の一人にしか過ぎない.....


「―――さっきの近藤の口ぶりだと、


 征四郎君。どうやら君にも


 "御代"の資格がある様だが.....」


「それは、あなたもだろう?」


征四郎の言葉に、善波は


大きな笑みを浮かべる


「ダメだ、ダメだ。


 俺みたいな適当な人間がこの叶生野の


 御代なんぞになりでもしたら


 家がまとまる訳がない。」


「・・・・」


"叶生野 善波"


叶生野家の長男ではあるが、


生来の性格がいい加減なせいか、


それとも元からその様な性格なのか、


叶生野の一族からはかなり


軽蔑(けいべつ)されている様だ


「話を聞けば、善波さん....


 善波さんにも、まだ


 御代になれる可能性はある―――――」


「何だ? 唆(そそのか)してるのか?」


「いや、そう言う訳じゃ―――――」


"善波と征四郎"


善波は、叶生野家において


娯楽産業や風俗業を営み


そのいい加減な経営手腕からか、


銀行業で金貸しを主な生業としている


征四郎に資金の援助を求めて来たり、


何かと二人の仕事には繋がりがある


「.....ともかく。


 俺達も、ここでこうしていても仕方がない


 一反外に出て俺達も、その


 "征佐"を探しに行った方がいいんじゃないか?」


「―――――....」

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