第5話

「―――それでは、私は、これにて....」


「ガチャッ」


部屋の中にいる叶生野の人間に背を向けると、


近藤は扉を開け部屋から出て行く.....


「・・・・」


後に残された叶生野家の者、


そして征四郎は尚佐が残した遺言書に


何も言わず、ただその場に立ち尽くす.....


「・・・・」


「・・・・・」


「・・・・」


「―――――、」


「ガタッ」


「明人――――」


しばらく沈黙が続いた後、叶生野の三男である


明人が突然椅子から立ち上がる


「・・・・」


"コッ コッ コッ コッ―――――


「お、おい、」


「―――――、」


「ガチャッ」


何も言わずに部屋の扉を開けると、明人は


そのまま部屋を出て行く


「な、ど、どうしたんだ、


 明人のヤツ―――」


「―――多分、"征佐"さんを


 探しにいったんじゃない....?」


「・・・・!」


「そ、そうか――――っ!」


「ガタッ」


「・・・・!」


慌てて、部屋の中にいた


正之 尤光 雅が椅子から立ち上がり


明人に合わせる様に部屋の外へと出て行く


「ガタッ」


「ガタタタッ」


"タッ タッ タッ タッ―――――


四人が部屋から出て行くと部屋の中に善波、


そして征四郎だけが取り残される....


「何だ!? アイツら!?」


「・・・・"征佐"の所在を見つける事ができれば


 その征佐を見つけた者は、


 次の"御代"になれる.....」


「―――征佐を?」


今までの話を聞いていなかったのか、善波が


征四郎に向けて驚いた様な表情を見せる


「ほら、さっきの....!」


「ああ、征佐は、この、叶生野荘にいるとか.....」


征四郎が言葉を継ぎ足す


「そう考えれば、他の一族の者を出し抜いて


 征佐と話す事ができれば、その人間は


 次の御代になれる可能性がある....!」


「――――そうか。」


「(―――――.....)」


"ダッ ダッ ダッ ダッ....


「ガチャ」


「おい! 押すな!」


「―――――、」


「(――――"御代"か....)」


扉から出て行く


尤光 正之 明人、雅の後姿を見ながら、


征四郎は"征佐"


そして御代の事を考えていた―――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る