第3話

「せ、"征佐"―――?」


「??」


「そうで御座います―――――」


「.... .....」


「・・・・」


「な、何かの間違いじゃないか」


正之が、目を細めながら


書簡を持っている近藤を見る


「いえ、確かにこの書簡に書かれた通り....」


「貸せっ」


"バサッ!


「――――、!」


近藤が手にしていた書簡を


正之は引っ手繰(たく)る様に取り上げる


「・・・・」


そこには、尚佐の字で短く


"征佐"


と書かれている


「・・・・!」


"バサッ"


「_____」


地面に投げ捨てられた書簡を、


近藤が無言で拾い上げる


「"征佐"だと――――....?」


部屋の中が騒然とする


「(――――征佐...)」


その言葉を聞いて、一部始終を傍観していた


征四郎も考えが止まる


「(征佐なんて人間、この叶生野の家には


  いないんじゃないか....)」


「せ、征佐なんて名前、聞いたことが――――」


「....いや、この叶生野の人間は


 一族の人間だけでも、優に百人は越える。


 もしかしたら、俺達が知らない別の――――」


「....多分、征佐という人は、


 この叶生野の一族には、存在しない.....」


「.....雅。」


尤光と明人の話に、次女である雅が話を割る


「....私は、一族の集まりや催(もよお)し事に


 よく顔をお出しさせて貰(もら)ってるから、


 この叶生野の人間の事はある程度


 知っているけれど――――」


「―――――、」


感情の起伏を感じさせない様な雅の言葉を、


尤光 明人はただ、黙って聞いている


「私が知る所、この、叶生野の家には


 "征佐"


 と名乗る人間は、いない筈....」


「ど、どういう事だ?」

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